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――今回の展示は、初期作品が中心になるそうですが、初期作品と、映画『エイリアン』以降と作風の違いは?
大沼「ギーガーの初期作品はシュルレアリスムの影響を強く反映させています。エアブラシを導入する以前、白黒の陰影を強調した作品は後のエロスとタナトスが融合した悪夢のような世界の原型ともいえるでしょう。そこには人間の内面に無限にどんどん深く入り込んでいくような冷淡な恐怖と快楽があります。そのような初期作品は、80年代における非常に多作で、同時にギーガー的なイメージがマスメディアに消費されていく時代を経てもなお、その源流を感じとれるような密度と重量感を持っています。もちろん、個人のコレクションなので、それほど作品数が多いというわけではありません。それでも、うちの画廊で、ギーガーに特化した展示は初めてとなります。この機会に改めて、ギーガーの作品を実際に観賞していただくことで、再発見や再評価のきっかけにしてもらえたら嬉しいです」
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――今回の展示の見所は?
大沼「ひとつは、初期からの重要なモチーフであるバイオメカノイドの立体作品を展示します。これは、ギーガー自身が制作した1点ものから、ギーガーの工房にて精巧に型取りをして創られた作品です。高さは約70センチ、金色と錆色の2つのバージョンがあります。もうひとつは、73年に発売されて世界的な大ヒットとなったELPの『恐怖の頭脳改革』のジャケット画に、キース・エマーソンとギーガーのサインの入ったリトグラフも展示します。ギーガーにとっては、このELPとのコレボレーションが世界的な知名度を得る最初のきっかけになりました。さらには、8月14日午後6時から、ヴァニラ画廊系列のバー十誡で、ギーガーの手がけたレコードアートをテーマにトークイベントも開催します」