史上最悪の「“非・水害”の洪水」8選!ビールが街を破壊し、糖蜜が人を殺めた、奇妙で恐ろしい大災害の記録

史上最悪の「“非・水害”の洪水」8選!ビールが街を破壊し、糖蜜が人を殺めた、奇妙で恐ろしい大災害の記録の画像1
イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)

「洪水」と聞けば、誰もが濁流を思い浮かべるだろう。しかし、歴史を紐解くと、水以外の液体が街を飲み込み、大惨事を引き起こした例が数多く存在する。

 ビールや溶けたチョコレートの波が押し寄せてくる……、それは食べ物好きの空想の中では甘い夢かもしれないが、現実は死と破壊をもたらす悪夢だった。今回は、歴史上記録された、奇妙で、そして恐ろしい「非・水害」の洪水を紹介する。

甘くて恐ろしい「食べ物の洪水」

1. ロンドン・ビール洪水(1814年)

史上最悪の「“非・水害”の洪水」8選!ビールが街を破壊し、糖蜜が人を殺めた、奇妙で恐ろしい大災害の記録の画像2
By Unknown author – Brewers’ Journal, 15 February 1906, p 55, Public Domain, Link

 19世紀初頭、ロンドンのビール醸造所には、高さ22フィート(約6.7メートル)の巨大な発酵タンクがあった。1814年10月17日、このタンクの鉄製の箍(たが)が一つ弾け飛び、熱い発酵中のビールが爆発的に噴出。その威力は周囲のタンクを連鎖的に破壊し、ついには醸造所の壁を突き破った。
約120万リットルものビールが、高さ4.5メートルの波となって、周囲の貧しいスラム街に流れ込んだ。いくつかの建物が倒壊し、8人が死亡。そのうち5人は、2歳の男の子の通夜に参列していた弔問客だったという悲劇も伝えられている。

2. ダブリン・ウイスキー火災(1875年)

史上最悪の「“非・水害”の洪水」8選!ビールが街を破壊し、糖蜜が人を殺めた、奇妙で恐ろしい大災害の記録の画像3
By Illustrated London News, South Dublin County Libraries, Public Domain

 ロンドンのビールとは対照的に、アイルランドのダブリンではアルコールそのものが死因となる悲劇が起きた。1875年6月18日の夜、ダブリン中心部の保税倉庫で火災が発生。保管されていた5000樽のウイスキーが炎に包まれ、燃え盛るアルコールの川が街路にあふれ出した。

 消防士が消火活動にあたる一方、多くの市民がこの「ウイスキーの川」に群がり、ありったけの酒を飲もうとした。『アイリッシュ・タイムズ』紙は、「人々は帽子や器、さらには自分のブーツを脱いでまで酒をすくっていた」と、その異様な光景を報じている。この事件による死者は13人。その全員が、火事ではなく急性アルコール中毒で命を落とした。

3. ボストン糖蜜大洪水(1919年)

史上最悪の「“非・水害”の洪水」8選!ビールが街を破壊し、糖蜜が人を殺めた、奇妙で恐ろしい大災害の記録の画像4
By BPL, Boston Public Library, Panorama of the Molasses Disaster site, Public Domain, Link

 粘り気の強い「糖蜜(モラセス)」が、アメリカのボストンを襲った史上最も有名な非水害洪水だ。1919年1月15日、ずさんな工事で作られた巨大な糖蜜タンクが突如崩壊。約230万ガロン(約870万リットル)もの糖蜜が、高さ4.5メートル、時速56キロの津波となって街を飲み込んだ。

 この黒い波は建物をなぎ倒し、高架鉄道の線路を破壊。21人が死亡し、150人が負傷した。厄介なのはその後だ。街の清掃には8万時間以上が費やされ、救助隊員から野次馬まで、誰もが靴の裏に付着した糖蜜をボストン中に広めてしまった。地元の人々によれば、その後何十年もの間、暑い日には街がほのかに糖蜜の匂いに包まれたという。

4. ブルックリン・チョコレート洪水(1919年)

史上最悪の「“非・水害”の洪水」8選!ビールが街を破壊し、糖蜜が人を殺めた、奇妙で恐ろしい大災害の記録の画像5
By Unknown author or not provided – U.S. National Archives and Records Administration, Public Domain, Link

 ボストンが糖蜜に襲われた数ヶ月後、今度はニューヨークのブルックリンが溶けたチョコレートに覆われた。1919年5月12日、チョコレート会社の倉庫で火災が発生。熱で溶けたカカオ、バター、砂糖の混合物が路上にあふれ出し、排水溝を詰まらせた。その深さは、「2ブロックにわたって手漕ぎボートが浮かぶほどだった」という。

 甘い香りに誘われて、子供たちが現場に殺到。「ひざまずいて、汚れた指で貪欲にすくっていた」と当時の新聞は伝えている。幸い死者は出なかったが、大火災による損害額は甚大だった。

死を招く「産業廃棄物の波」

5. アベルヴァンの悲劇(1966年)

史上最悪の「“非・水害”の洪水」8選!ビールが街を破壊し、糖蜜が人を殺めた、奇妙で恐ろしい大災害の記録の画像6
By Unknown government photographer, Source, Public Domain, Link

 ウェールズの小さな炭鉱町アベルヴァンを襲ったのは、黒い死の波だった。1966年10月21日の朝、山の斜面に積み上げられていた石炭採掘の廃棄物(ボタ山)が、豪雨の影響で大規模な地滑りを起こした。

 黒い泥流は時速130キロで麓の町に流れ込み、小学校を直撃。144人が死亡、そのうち116人が子供たちだった。当時7歳だった生存者は、「教室に座っていると、飛行機が着陸するような轟音が聞こえた」と後に語っている。次の瞬間、教室の壁は崩れ落ち、黒いヘドロが部屋を満たしたという。この悲劇は、ずさんな廃棄物管理が招いた人災としてイギリス社会に大きな衝撃を与えた。

6. アジカの赤泥流出事故(2010年)

史上最悪の「“非・水害”の洪水」8選!ビールが街を破壊し、糖蜜が人を殺めた、奇妙で恐ろしい大災害の記録の画像7
By Ministry of Public Administration and Justice, Ministry for Government Communication, Copyrighted free use, Link

 ハンガリーのアルミニウム精錬工場で、悲劇は起きた。2010年10月4日、アルミニウムの精錬過程で生じる有毒な「赤泥」を貯めていたダムが決壊。70万立方メートルもの強アルカリ性の泥が、津波となって近隣の町を襲った。

 この有毒な泥流は建物を浸水させ、ドナウ川にまで達した。約200人が化学火傷を負い、10人が死亡。2019年には、工場の従業員10人が刑事過失で有罪判決を受けている。

7. キングストン化石燃料プラントの事故(2008年)

史上最悪の「“非・水害”の洪水」8選!ビールが街を破壊し、糖蜜が人を殺めた、奇妙で恐ろしい大災害の記録の画像8
By TVA – Tennessee Valley Authority (TVA), Source, Public Domain, Link

 アメリカ史上最悪の産業廃棄物流出事故とされるのが、テネシー州のキングストン石炭火力発電所で起きた事故だ。2008年12月22日、10億ガロン(約38億リットル)を超える石炭灰のスラリーがダムから流出。

 鉛やヒ素、ウランといった発がん性物質を含む有毒なヘドロは、約20軒の家屋を破壊し、川に流れ込んだ。直接の死者は出なかったが、悲劇は後からやってきた。清掃作業にあたった作業員たちが、数年後に次々と病に倒れ、死んでいったのだ。「石炭灰は食べても安全だと聞かされていた」と、ある作業員は語る。900人いた作業員のうち、10年後には約250人が病気になり、30人以上が死亡したと報告されている。

まだある!奇妙で破壊的な洪水

8. ウィスコンシン・バター洪水(1991年)

史上最悪の「“非・水害”の洪水」8選!ビールが街を破壊し、糖蜜が人を殺めた、奇妙で恐ろしい大災害の記録の画像9
イメージ画像 Created with AI image generation (OpenAI)

 1991年5月3日、ウィスコンシン州の倉庫で火災が発生。保管されていた約9000トンのバターが溶け出し、油まみれの川となって流れ出た。消防士たちは、深さ1メートルにもなる溶けたバターとチーズの川の中を歩きながら消火活動にあたったという。「男がバターまみれになるべきでない場所まで、バターだらけになったよ」と、当時の消防署長は語っている。

 ビール、糖蜜、バターの洪水。まるで子供の夢のような光景だが、現実は悪夢だった。もしあなたの街に甘い香りの川が現れたなら、喜んで飛び込む前に、まずそれが歴史の二の舞でないことを確認した方がいいだろう。

参考:Mental Floss、ほか

関連キーワード:, ,
TOCANA編集部

TOCANA/トカナ|UFO、UMA、心霊、予言など好奇心を刺激するオカルトニュースメディア
Twitter: @DailyTocana
Instagram: tocanagram
Facebook: tocana.web
YouTube: TOCANAチャンネル

※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。

人気連載

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】

現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...

2024.10.02 20:00心霊

史上最悪の「“非・水害”の洪水」8選!ビールが街を破壊し、糖蜜が人を殺めた、奇妙で恐ろしい大災害の記録のページです。などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで

人気記事ランキング17:35更新