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――ギーガー作品の鑑賞ポイントとして、エロティシズムな視点からはどうでしょうか?
大沼「エアブラシを導入してからの作品は、最初の妻となったリーとの出会いもあって、それまでの無機的で孤独な幻想世界に女性のイメージが融合して、生と死、有機物と無機物が混ざり合うギーガーならでは作風が確立されていきます。ギーガーにおけるエロスとタナトスのイメージの頂点は、代表的な作品集『ネクロノミコン』(1977年)だと思います。そこに収められた作品もご覧いただけます」
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――絵画作品以外も含めて、今回ならではものは?
大沼「珍しいところでは、ハルコネンチェア(ミニチュア35センチ、サイン入り)や限定タロットカード、リトグラフ、ポスターなど出展作品はすべてお求めやすい価格で購入可能となっております」
ギーガー・ミュージアム(撮影:ケロッピー前田)(C)GIGER MUSEUM
※追記
02年、筆者はスイス.グリュイエールにギーガーの取材に赴いている。ご本人との面会はかなわなかったが、ギーガー・ミュージアムで体感したその作品世界には圧倒されるばかりだった。今回のギーガー展は、貴重な初期作品を中心に美術家ギーガーの作品世界を振り返れるというのが嬉しい。
●ギーガー・ミュージアム
スイス、チューリッヒから電車で約3時間、有名観光地でチーズフォンデュが名物なグリュイエール城内にある。
・http://www.hrgigermuseum.com/
●Gallery Lucifer氏のコメント
ダダ、シュルレアリズムは1920年代から60年代に至る過程できわめて多様な方法により、あらゆる変革的な源泉へと接触を試みた。それは当時アクティヴなエネルギーを埋蔵していた哲学、心理学、政治、文学などの表現形態との結びつきを生んでいった。それらシュルレアリズム的思想を受け継ぎ、アマルガム状の巨大なエネルギーとして発展を遂げたのがスイスのH・R・ギーガーである。 しかしながら、それらに対する反作用として80年代に入るとすべてのエネルギーは消失し、創造的な動きは商業的で堅実な大衆娯楽である映画のキャラクターに取って替わられた。今回の展示会では80年代における爛熟と退廃、またその源流である60、70年代の勃興を再現している。ぜひ会場に足を運び、真に自覚的な態度で、用心深く綿密にギーガーのエネルギー方法論の蘇生を企画した本展示会の意図を感じとってほしい。(Gallery Lucifer http://www.gallerylucifer.net/)
●展示情報
Gallery Lucifer presents
「H.R.GIGER(ギーガー)陰翳の廻廊」
会期=2016年7月25日(月)~8月6日(土)
営業時間=月~土12:00~19:00 日12:00~17:00 会期中無休
(会期中無休/入場は閉館の30分前まで)
会場=ヴァニラ画廊 展示室B
入場料=500円(AB共通料金)
・http://www.vanilla-gallery.com/archives/2016/20160725b.html
※同時期開催
展示室A 呪みちる作品展「ドリーム・マシーン」(7月25日~8月13日)
・http://www.vanilla-gallery.com/
取材・文=ケロッピー前田
1965年東京生まれ、千葉大学工学部卒、白夜書房(コアマガジン)を経てフリーランスに。世界のアンダーグラウンドカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『ブブカ』『バースト』『タトゥー・バースト』(ともに白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。近年は、ハッカー、現代アート、陰謀論などのジャンルにおいても海外情報収集能力を駆使した執筆を展開している。前田亮一『今を生き抜くための70年代オカルト』(光文社新書)が話題に。新刊『クレイジートリップ』(三才ブックス)2016年8月5日発売!
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