コンピューターは「皮肉」を感じるか?遂に言語の本質を理解し始めたAIが招く“不自由な未来”

■人工知能は人間を超越するか

コンピューターは「皮肉」を感じるか?遂に言語の本質を理解し始めたAIが招く不自由な未来の画像5ノーム・チョムスキー「Wikipedia」より引用

 今回の研究により、フューチャリストのレイ・カーツワイル氏らが2045年に訪れると予言しているシンギュラリティ(人工知能が人類を超越する技術的特異点)がいっそう現実感を増してきた。近い将来、機械は“人間”になってしまうのだろうか? そのためにはやはり、「言語」の探求が不可欠だろう。

 しばしば人間の本性は言語能力だと言われる。とはいえ、人間の言語に近いものを用いる動物がいることも確かだ。しかし、言語の数ある特徴の中でも、再帰性は人間にしか見られない特徴であると米言語学者のノーム・チョムスキーは信じている。ということは、もしこの再帰性を用いて自由に長文を創造することができれば、その生物(機械?)は限りなく人間に近い存在といえるかもしれない。そして、人工知能はすでにその段階に迫っているようだ。

※(「彼は日本人だ」という文を、「「彼は日本人だ」と母が言った」、「「「彼は日本人だ」と母が言った」と私は思う」のように、「~と」でつなげて拡張できる言語の性質)

 公立はこだて未来大学で人工知能を研究する松原仁教授は、AIが書いたSF小説で大胆にも文学賞「星新一賞」を狙っているという。教授によると、AIの執筆能力はまだまだ人間に及ばず、長文を書かせると支離滅裂な文章になってしまうそうだが、単文の精度はなかなかのものだという。

 最終的に人間の手で整えられたものの、完成したAI小説を読んだプロのSF小説家は、小説としての及第点に達している60点の出来栄えと高く評価したそうだ。このまま研究が進めば、完璧な小説を書き通すことも夢ではないかもしれない。

 人間の言語には他にもさまざまな特徴があるが、AIの長足の進歩を前にすると、どれも解決可能かのように思えてくる。実際のところカーツワイル氏が主張するように、人工知能が人間を超えるのは時間の問題かもしれない。そして、スティーブン・ホーキング博士などが、“高度な人工知能が人間に牙を向く危険性”に言及している点も我々は忘れてはならないだろう。
(編集部)


参考:「Live Science」、「ArXiv」、ほか

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