自然界には存在し得ない「半合成生物(E. coli)」が誕生! 理学博士が“人工DNA”のリスクと意義を緊急解説
――科学分野だけではなく、オカルト・不思議分野にも造詣が深い理学博士X氏が、世の中の仰天最新生物ニュースに答えるシリーズ
自然界には存在し得ない、人間の手が加えられた生物「半合成生物」が現実のものへとまた一歩近づいた。DNAに「X」と「Y」という人工の塩基を加えた人工DNAを持つ大腸菌(E. coli)が米国で作成され、分裂に成功したという。英「BBC」をはじめとする複数の海外メディアが報じた。
■人工DNA、60回分裂してもOKだった!
ご存知の通り、DNAはアデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)の4種類の塩基が連なって遺伝情報を記述している。2014年、米国カリフォルニア州にあるスクリプス研究所のフロイド・ロムズバーグ氏らのチームは、この4種類に加え「X」と「Y」という新たな塩基を人工的に加えたDNA鎖を作り、大腸菌に組み込んで複製させることに成功した。この成果は当時、科学誌「Nature」に掲載されて大きな話題を呼んだ。
そして今回、ロムズバーグ氏らは「半合成生物」を作るためのさらなる一歩に成功した。2014年の段階では、大腸菌中の人工DNAは安定しておらず、時間の経過とともにXとYが減少することがわかっていた。しかしYの改良や、CRISPR-Cas9(ゲノム編集技術)を使ったDNAのスペルチェック機構の組み込みなどにより、人工DNAを持つ大腸菌は60回分裂してもXとYを保持できた。この結果は、1月23日の米国科学アカデミー紀要に発表された。
■半合成生物、いったいどんな役に立つのか?
新たな塩基の人工的な導入や、半合成生物の作成には危険がないのだろうか。この研究について、生物学に詳しい理学博士X氏に解説を依頼した。
「まず、新しい塩基ですが、これはむしろ半合成生物の勝手な成長・増殖を防ぐ安全装置として機能するでしょう。XとYは特殊な化学物質を外から補給しないと維持できないはずです」(X氏)
つまり、半合成生物は特別な栄養素がないと生存できない生物であるとX氏はいう。モンスター映画で幾度となく目にしたような設定だが、現実になったというのだ。
「また、今回作成された半合成生物は、XとYという人工の塩基を持つだけです。XとYを含めた新しいコドン表(塩基配列をアミノ酸配列へと翻訳するときの対応表)は持っていません。これはつまり、まだ完全な半合成生物ではないということです」(X氏)
X氏は、XとYを含んだ遺伝暗号が完全に機能するシステムが構築された時、ようやく半合成生物が完成したといえるのではないかと語った。実際、ロムズバーグ氏も次なる段階として、すでにXとYを含んだRNA転写(タンパク質の合成)の研究に着手しているという。そしてX氏は、半合成生物の道具としての意義を強調した。
「XとYという2文字が増えるだけで、最大172種類のアミノ酸からなるタンパク質を自在に作ることができます。現在はたった20種類のアミノ酸しか扱えないことを考えれば、これは非常に強力な武器になります。要するに、半合成生物が完成すれば、より複雑なタンパク質を簡単に作れるようになり、新たな薬剤の開発などに役立つと期待されているのです」
現実のところ、半合成生物の完成まではもう少し時間がかかるというのが実情のようだ。だが、いずれ完全な半合成生物が我々の目の前に姿を表すのは明らかだ。知らぬところで、人間はまた一歩、神へと近づいている。
(吉井いつき)
参考:「BBC NEWS」、「The Scripps Research Institute」、「PNAS」、ほか
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