ピンチの中でも俯瞰する“もう1人の冷めた自分”の正体判明! 風俗店でくも膜下出血になった漫画家・中川学インタビュー
風俗店でのプレイ中にくも膜下出血を発症し、生死の境をさ迷ったという実体験をもとに描かれたエッセイ漫画『くも漫。』が大好評のすえ、ついに実写映画化も決定、2月4より新宿バルト9ほかにて公開予定だ。去年発売された失踪体験エッセイ漫画『探さないでください』も話題の原作者の漫画家・中川学とは一体どんな人物なのだろうか?
※インタビュー1回目【『くも漫。』知られざる裏話】
※インタビュー2回目【『探さないでください』知られざる裏話】
――中川先生の感性って独特ですよね? 例えば、『くも漫。』でしたら、くも膜下出血の後、脳血管の攣縮(※)の検査を行った時に、「もうこれ以上症状が悪化するなら生きていたくない」と冷静に考えているシーンですとか、『探さないでください』なら、勤務先の中学校から突然失踪を決めた後も、冷静に状況を考えて、葛藤しつつどんどん進んでいって、最終的には北海道から尾道に辿り着いちゃう、みたいなところですとか。非常時に物凄い後ろ向きにアクティブで、かつ冷静と言うか…。
中川学先生(以降、中川) そうですか?
――例えば自分なら、もしかすると症状が悪化してしまうかもしれない検査の時は、「頼むから無事であってくれ!」ぐらいにしか考えられないと思いますし。失踪するにしても、そこまで追い詰められいる状態だと、もうヤケクソになって葛藤も何もせずに突っ走って、ある時正気に戻って頭を抱える、みたいな感じになるんじゃないかなと。
中川 いや、当時僕も結構混乱してたと思いますよ。今振り返って描いているからこういう風な描写になったというか。
――でも、失踪する時に車を乗り捨てる時にも、後で親が取りに来た時に駐車料金を取られないように無料の駐車場に乗り捨てよう、とか考えてらっしゃるじゃないですか。もう自分なら路肩に捨てちゃいますよ、そんな状況下だと(笑)。
中川 みんな追い詰められて混乱した時って、そんな感じなんですかね? 後から思い出してもこういう考えがあったなあ、みたいなのとかないのかなあ。
――個人的には、そういう感じで追い詰められて爆発した時の事を思い出してみても、もう開き直って無茶苦茶な行動をしてたなあ、ぐらいにしか振り返れないんですよね。先生みたいにその後も思考停止しないで冷静に状況を分析する、みたいなことは全然できていないんです。ですから、失礼な言い方になるんですけど、先生のこういう描写には、ある種不気味な意志力を感じるというか。
中川 うーん、もしかすると、それは僕の体の問題なのかもしれないですね。
――体ですか?
中川 漫画にも描いてるんですけど、もともと歯の嚙み合わせが悪くて体調が優れない時期があったりですとか、高校3年生の時に自然気胸の手術をして、そこからずっと胸のあたりに違和感があって。
――あー、作中に描かれてましたね。
中川 だから、何かを集中して考えようとするときに、体の違和感っていうもう一つの意識があるんですよ。だから、何かについて悩んでいる時も、悩んでいる事と、体の違和感っていう二つの意識が常に存在しているんですよね、大学生ぐらいの時からなんですけど。この失踪をする時も、もちろん思い詰めてるんですけど、それと同時に「肺の調子悪いんだよなあ」みたいな意識があるんですよ。それで、その違和感を覚えている方の意識が、「ああ、俺今悩んでるなあ」みたいな感じで、俯瞰で自分を見ているみたいなところがあったんですよね。だからこういう描写になったのかな、と思います。
――違和感によって、常に自分を俯瞰で別の自分が常に存在しているってことですか。よく、めちゃくちゃキレてる人の横で、一斗缶とかを叩くとか、そういう大きな音を出すと正気に戻る、みたいな話があるじゃないですか。先生もそれと同じで、体の違和感をスイッチとして、何か思い詰めてしまっても、正気に立ち返る瞬間がある、みたいな。
中川 そうそう。だからこういう状況の時は地獄ですよね。違和感の方も辛いし、それを忘れている時は悩んでいる時って事ですからね。
――それは辛そうですね…。
中川 だから、くも膜下出血になった時、ちょっと嬉しかったんですよ。
――えっ!?
中川 くも膜下出血が大きすぎて、肺の違和感を飲み込んで、体が統一されたんですよ。倒れた後集中治療室に入った時、くも膜下出血の苦しみ一つになったというか。初めてだったんですよね、そういうのは。また治って日常に戻ったら、違和感が復活したんですけど。
――そんな「やっと出逢えた!」みたいなテンションでくも膜下出血について語られても(笑)。今もその違和感というのはあるんでしょうか。
中川 歳を経て、違和感も大分なくなってきたんですけど、今でもちょっとありますね。色々病院とかに行ってみてるんですけど、やっぱりレントゲンでも大丈夫だし、謎の違和感なんですよね。
人気連載
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...
2024.10.02 20:00心霊ピンチの中でも俯瞰する“もう1人の冷めた自分”の正体判明! 風俗店でくも膜下出血になった漫画家・中川学インタビューのページです。中川学、くも漫。、探さないでくださいなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで