2007年にプーチンが語った「ミュンヘン演説」での予言的中! サイキックレベルの予知能力に戦慄

 まずは徹底したアメリカ批判である。米ソ冷戦期の終盤に両国間で核兵器削減の流れをせっかく生み出したというのに、アメリカは新たな戦略防衛ミサイルシステムを開発し核兵器拡散の元凶となった。アメリカが国際法や国連を軽視し、中近東全体の政情不安定化に拍車をかけたことを激しく批判している。つまりプーチンは2007年の時点で、2010年から2012年にかけて中東・北アフリカ地域で相次いで発生した大規模な反政府デモと内戦を予見していたことなる。

 2011年にはリビアで内戦が起こりカダフィ政権が崩壊し、シリアでもアサド政権側の政府軍と反体制組織による内戦に突入。そこへISも加わって泥沼化し、昨年末までまったく予断を許さない事態であったことはご存じの通りだ。昨年12月に政府軍のアレッポ奪還を支援してひとまずの収拾を図ったのは当のロシアである。

 プーチンの主張のもうひとつは、やはりアメリカに起因する世界の一極化への流れである。当時、加速度的に進むグローバル化とアメリカ・EUによる世界権力の一極集中化、いわばNWO(新世界秩序、世界政府)樹立へ向かうトレンドに対して断固たる反対の意志を表明しているのだ。

 プーチンによれば世界の一極化は今の問題を何ら解決するものでなく、人々のモラルの拠り所をなくすものになるという。世界の一極化は受け入れられないばかりが、現実には今日の世界では不可能であると断言している。そして今ある地域摩擦は世界が一極化したとしても解決できないということだ。そもそも、一極化した世界はもはや民主主義社会ではなくなり“カオス”になると主張している。

 世界統一政府の足がかりとして創設されたEUの存在基盤が今日激しく揺さぶられる事態を迎えているが、プーチンはこの時点で前もって、近い将来にEUが立ち行かなくなることを指摘していたということにもなる。

 2010年頃からはじまったギリシャの財政危機はEUの存在意義を考えさせる大きなきっかけになったが、そこへきて昨年はイギリスのEU離脱が国民投票で決められるという驚くべき出来事が起きた。今年はEU圏の各国で重要な選挙が行われる手はずになっており、一方でスペインの国家財政が危険水域にあるのではないかともいわれている。プーチンが予見したように、今年はヨーロッパがさらに大きく動くことになるのだろうか。2017年も早くも2カ月が過ぎようとしているが、引き続きまったく予断を許さない局面が続きそうだ。
(文=仲田しんじ)


参考:「Disclose.tv」、「The Daily Coin」、ほか

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
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