CIAに選ばれし“6人の超能力者”が戦った“グリル・フレーム計画”全貌が機密文書で公開!! 透視で人質救出も

■グリル・フレームがイランに“出動”

“サイキック部隊”はいったいどの“戦場”へと駆りだされたのか? それは戦地ではなく、1979年11月にイランで発生した「イランアメリカ大使館人質事件」への“出動”であった。

 1979年1月のイラン革命後、国を追われ一時エジプトへ逃れていたイランの元皇帝、パフラヴィーがアメリカに迎え入られたことに反発したイスラム法学校の学生らが、同年11月4日にアメリカ大使館に侵入して占拠。施設内にいた大使館職員や海兵隊員とその家族の計52人を人質に元皇帝の身柄引き渡しを要求した事件が「イランアメリカ大使館人質事件」である。

CIAに選ばれし6人の超能力者が戦ったグリル・フレーム計画全貌が機密文書で公開!!  透視で人質救出もの画像2「イランアメリカ大使館人質事件」 画像は「Wikipedia」より

 この事態をなんとか収拾しようとアメリカ政府が白羽の矢を立てたのがほかならぬサイキック部隊であるフレームなのだ。もちろんフレームが直接イランへ赴いたわけではない。フォートミードの拠点で6人の超能力者が集いリモートビューイング(遠隔透視)による“作戦行動”を200回以上も行っていたことが文書から明らかになっている。

 その“作戦行動”の具体的な目的は、リモートビューイングで遠く離れたイランのアメリカ大使館の中を“観察”し、アメリカ人の人質が施設内のどこにいるのか、どのように軟禁されているのか、健康状態はどうなっているのかを把握することにあった。そしてこれらの情報をもとにして、何らかの方法で人質を救出することが最終目標であったのだ。はたして、このサイキック部隊の“作戦行動”は功を奏していたのだろうか。


■リモートビューイングは成功していたのか?

CIAに選ばれし6人の超能力者が戦ったグリル・フレーム計画全貌が機密文書で公開!!  透視で人質救出もの画像3写真はグリル・フレイムのフォートミードの拠点 「Miami Herald」の記事より

 1981年1月20日に人質が444日ぶりに解放されるまで、200回以上の“作戦行動”を行なったといわれているグリル・フレームだが、今回公開された文書でも202件もの報告が残されているということだ。

 しかし残念なことに「Miami Herald」紙などによればグリル・フレームのリモートビューイングの精度はきわめて低いものであったということである。当時の米空軍大佐の言及によれば、202件のレポートのうち“作戦成功”したのはわずか7件で、59件のレポートはおそらくは“部分的に”成功を収めたものであるという。だが一方で、ある米陸軍士官はレポートの45%がおおむね“作戦成功”であると擁護しているようだ。

 もはや今になってグリル・フレームの200回以上にも及ぶ“リモートビューイング作戦”がどれほどの成功率だったのか当事者たちにさえ確かめる術はないと思われるが、当時のグリル・フレームの一員であった有名な超能力者のジョゼフ・マクモニーグル氏は、CIAの情報公開そのものを疑っているようだ。つまり、実際にグリル・フレームのリモートビューイングが成果を挙げたレポートは公開されず今もまだ機密文書として保管されていると指摘しているのである。

CIAの機密解除文書はゴミです。CIAが本当に重要な文書の機密を解除することはありません」(ジョゼフ・マクモニーグル氏)

 専門家の間でも意見は分かれているようだ。政府系情報機関で20年の研究キャリアを持つ超心理学(parapsychology)の専門家、エドウィン・メイ氏は、実際にグリル・フレームの超能力者たちは大使館の内部の様子や人質の状態を“見て”いたはずであると、ジョゼフ・マクモニーグル氏を支持している。

 他方、“アンチ超能力者”のジェイムズ・ランディ氏はグリル・フレームの活動は「占い師が水晶玉を覗き見ているようなもの」であり、軍事予算の壮大なムダづかいであったと主張している。つまり公開されたレポート通り、軍事作戦としては大失敗だったと批判しているのだ。

 大きな謎と疑問を残しながらも、グリル・フレームをはじめとする米陸軍の“サイキック部隊”は1995年にすべてのプロジェクトが終了し姿を消すことになる。参加した超能力者は計227人を数え、行われた“作戦”は2万6000回にも及んだという。“サイキック部隊”自体が機密事項になっている以上、我々には確かめようもない存在ということにもなる。今後何か進展があるのかどうか、多いに気になる話題だ。
(文=仲田しんじ)

参考:「Collective Evolution」、「Miami Herald」ほか

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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