350年以上謎だった物理の難問「オランダの涙」が遂に解決! ハンマーでも割れないのに“あること”をすると砕け散るガラス玉のナゼ
1661年にイギリスで行われた実験に立ち会ったカンバーランド公ルパートにちなみ名付けられた「ルパートの滴(オランダの涙)」。このオタマジャクシの尾が細くなったような不思議な形をしたガラス玉に科学者らは350年以上も頭を抱えてきた。
■オランダの涙の2つの謎
オランダの涙の作り方は至って簡単。溶けたガラスの滴を水で冷やせばできあがるが、この簡単な物体には2つもの謎が秘められていた。1つ目は、滴の丸みを帯びた先端部分、オタマジャクシでいうところの頭の部分が、ハンマーで叩いても割れないほど強固であること。2つ目は、簡単にヒビの入る尻尾部分が折れると、本体全体が粉々に砕け散ってしまうことである。
2つ目の謎は、1994年、米・パデュー大学のスリニワサン・チャンドラセカール教授らが解明。秒間100万フレームのハイスピードカメラを用いてオランダの涙が粉砕する様子を撮影したところ、尻尾につけられたヒビが秒速1.5kmという超高速で頭部分に伝播し、真っ二つに割れ、結果的に粉々に砕けることが分かった。
そしてこの度、科学ニュース「Live Science」(7月27日付)が、遂に1つ目の謎も解決されたと報じている。研究を率いたのは、またしてもチャンドラセカール教授。2016年に発表された論文によると、「光弾性法」と呼ばれる前回とは少し異なる技術を用いて、謎の解明に取り組んだそうだ。
具体的には、オランダの涙を水で満たされたプールの中に入れ、それを偏光器で透過するというもの。透過した偏光の影響から、滴内部の圧力を推定することができるそうだ。結果、滴の頭部には、1インチ四方に50トンもの圧縮応力(物体を外部から圧縮した時、物体の内部で釣り合いを保つために生ずる力)がかかっていたことが判明。異常なまでの強固さの理由が突き止められた。
■強化ガラスと同じ構造だった
チャンドラセカール教授によると、製造過程において、熱せされたガラスが水の中で外側から急速に冷却されたことで、爆発的なスピードで収縮。収縮したガラス外部がいわばジャケットのように、内部のガラスの原子を押しつぶしていった結果だという。以上のプロセスは強化ガラスの製造と原理的には同じとのことだ。
このように、恐ろしいほどの強固さを誇るオランダの涙であるが、チャンドラカール教授が「破壊できないものは何もない」と語るように、極めて強い力を加えれば、粉砕可能である。その様子は実験動画でも確認できる。
YouTube上には他にもオランダの涙の作り方や粉砕実験の方法など多くの情報が転がっている。興味のある読者は、怪我をしないよう注意しながら試してみてはいかがだろうか?
参考:「Live Science」、「Applied Physics Letters」、ほか
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2024.10.02 20:00心霊350年以上謎だった物理の難問「オランダの涙」が遂に解決! ハンマーでも割れないのに“あること”をすると砕け散るガラス玉のナゼのページです。物理学、謎、ガラス、難問、オランダの涙、ルパートの滴、解明などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで