“クライマックス感”がなくなった時代の恐怖や不思議とは? 哲学者・千葉雅也×俳人・北大路翼が語る「オカルトとセックスとギャンブル」

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クライマックス感がなくなった時代の恐怖や不思議とは? 哲学者・千葉雅也×俳人・北大路翼が語る「オカルトとセックスとギャンブル」の画像6歌舞伎町酒場「砂の城」

北大路 オカルトといえば1999年が来るまで、われわれの世代は世紀末を信じていたんですよ。それが全く裏切られて醒めたんじゃないかな。

千葉 世紀末感覚が終わって、ポストオカルトの時代なんだよね。その時代を考えているのは映画監督の黒沢清さんとかになるのかな。今の時代ように“クライマックス感”がなくなった時代の恐怖や不思議を面白くするのは難しいよね。むしろ普段流れてくるニュースの方がオカルトみたいになってる時代じゃない。デイヴィッド・ヒュームという哲学者が「人間は物事を並べられると因果性を見出す生き物」だと言っているんです。ヒュームはとても過激な主張をしていて、そもそも世界には「因果性がない」という議論を立てた人です。「前にきたものと後にきたものがふたつ順番で並ぶと人間は因果性を見てしまう」から、それが因果性の正体だということ。つまり、因果性は人間が主観的に作ってしまうものであり、客観性はないという極端な理論を立てたんです。この「因果性」というのはポストオカルトを考えるヒントになるかもしれませんね。

――確かに、オカルト話はすべて「因果性」で成り立っているので、それを崩して再構築たりするとよいのかもしれません。次世代オカルトを考える上での、決定的ヒントを頂きました。ありがとうございます。

――最後に『時の瘡蓋』の中から特に気になった句を挙げていただけますか。

千葉 わかりました。それにしても、この本はパラパラめくって読むのも楽しいね。では、選びます。

「ばりばりと尻掻いている春の風(p96)」

千葉 ラフな身体の物質感がいいよね。北大路節だと思う。好きだね。尻を掻いているのが男とも女ともとれるし、誰でも憑依できる句だね。

北大路 おばさんでも、アトピーの子どもでもいいしね。

千葉 そうそう。ここでもジェンダーの可動性がある。では、もう1つ。

「唇の火傷のような花の冷え(p112)」

千葉 熱いものと冷たいものの対比がいい。「花の冷えと唇」「火と冷え」「身体の局所と花の冷え」という広いアトモスフィア、その両極がぶつかってスパークしているような句だよね。

北大路 照れる!

「バラバラになってプールの更衣室(p124)」

千葉 これもいいね。すごくさりげない場面の中に動きがある。プールの更衣室に差し込む、全体的に青みがかった光が広がってくる感じがする。塩素臭い匂いと人の体臭も感じるし、ちょっとゲイ的な感覚もあるんだよ。

北大路 僕もそう思う。

「生ゴミの匂ひに暑さ残りけり(p94)」

千葉 ごく普通の描写なんだけど、なかなか作れるものじゃない。ちょっと悔しくなるぐらいいい句。こんな俳句が作れるなんて、うらやましいね。

北大路 千葉さんにそう言ってもらえると、とても嬉しいです。

――お二方、本日はありがとうございました。

北大路 今度、一緒にイベントやろうよ。

千葉 いいですね。考えておきますよ。

 同世代で子どものころから触れてきたカルチャーも似ているふたり。果たして、哲学者×俳人イベントは実現するのか!? もしそうなるならトカナ編集部も全力で応援します。乞うご期待!

◆プロフィール
◆北大路翼(きたおおじ つばさ)
1978年、横浜市生まれ。歌舞伎町俳句一家『屍派』家元。小学5年生のころ、種田山頭火を知り、俳句を作り始める。2012年芸術公民館を会田誠から譲り受けて、『砂の城』と名付け経営する。著書に、第一句集『天使の涎』(邑書林)、北大路翼句集『時の瘡蓋』(ふらんす堂)がある。
公式ツイッター @tenshinoyodare◆千葉雅也(ちば・まさや)
1978年、栃木県生まれ。哲学者。東京大学教養学部卒業。パリ第10大学を経て、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。専門はフランス現代思想及び哲学・表象文化論。現在は、立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授。著書に『動きすぎてはいけない ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』(河出書房新社)、『別のしかたでツイッター哲学』(河出書房新社)『勉強の哲学 来たるべきバカのために』(文藝春秋・2017年)など多数。
公式ツイッター @masayachiba◆松本祐貴(まつもと・ゆうき)
1977年、大阪府生まれ。編集者・ライター・世界のマイナー酒・居酒屋研究家。大学在学中からライターをはじめ、その後、雑誌記者、出版社勤務を経てフリーで活動する。テーマは旅、酒、サブカル、趣味系など多数。著書『泥酔夫婦 世界一周』(オークラ出版)が発売中。・ブログ~世界一周~旅の柄:http://tabinogara.blogspot.jp/【対談シリーズ全部読みはコチラ】

文・取材=松本祐貴

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