寒い部屋で金魚を飼えば、水槽の水がビールになる!? 体内で酒を作りだす金魚のメカニズムを理学博士が徹底解説!

 しかし、なぜフナたちはアルコールを生成することで冬の無酸素の池の中を生きられるのだろうか? まさかとは思うが、極寒の地に住む人々がウォッカを飲むように、酔っ払って寒さを紛らわしているのだろうか。生物学に詳しい理学博士X氏に解説をお願いした。

「乳酸は体内でエネルギーを得る対価として生じます。乳酸を無害化・再利用する機構ももちろん備わっていますが、酸素の供給が十分でないと過剰な乳酸を除去しきれません。体内の乳酸濃度は高くなりすぎると生命の危機を招きます。金魚やフナは無酸素状態では乳酸をエタノールに変換し、エラから排出することで体内の乳酸を排出しているのです」(X氏)

寒い部屋で金魚を飼えば、水槽の水がビールになる!? 体内で酒を作りだす金魚のメカニズムを理学博士が徹底解説!の画像3画像は「University of Liverpool」より引用

■金魚酒は作れるか?

 つまり、フナたちが体内で作ったエタノールはエラから排出され、水の中へと放出されているのだ。ここで気になるのは、例えば寒くて無酸素の状態で金魚を飼えば、水槽で酒が作れるのかということだ。もしそんなことが可能なら、酒好きが古来より夢見る自然と酒の湧く壺を再現できるかもしれない。

「試算によると、ビアジョッキで200日飼育すると、ちょうどビールと同じくらいの度数(4%)のアルコール溶液ができるそうです。金魚のアルコール生成機構は酒の醸造に使われる酵母菌とも似ているということですが、さすがに酒作りは無理でしょう。高濃度のアルコールを含む水中では、金魚自体が死んでしまいますしね」

 残念ながら金魚酒を作ることは難しいようだ。だが今回の発見により、酒作り以外にも可能性が生まれたとX氏は指摘する。

「寒く、酸素の少ない水中で生きられる魚の開発に、今回の発見は応用できると思います」(X氏)

 トカナでは以前より、地球寒冷化の可能性を指摘している。もし地球に再び氷河期が訪れたならば、フナの遺伝子を組み込んだ魚が凍りついた海の下で養殖されるのかもしれない。

参考:「BBC」、「Scientific Reports」など

文=吉井いつき

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