25年間正体不明の謎の音楽レーベルに密着取材! 映画『MOTHER FUCKER』が激しく素晴らしい作品である理由(監督対談)
■パンクの方法論を家庭に持ち込んだだけ
谷ぐち代表 それはですね、嫁さんはどう思ってるかわかんないけど、俺自身はパンクに影響を受けたからだと思ってるんですよ。パンクって、もともとあったスタイルをどんどん壊して更新していくとか、あるいは逆に旧来のスタイルをずっと貫くとか、いろいろなスタイルがあると思うんです。で、例えばFugazi(80年代後半から00年代前半にかけて米ワシントンD.C.を拠点に活動したポストハードコア・バンド)のあり方って、俺には衝撃的だったんです。ツアーでディスコード・ハウスに行ったら、「あんな親切な奴らがいていいのか?」ってくらい、みんなめちゃくちゃいい人らしいんですよ。
大石 へえええ。
谷ぐち メンバーの家族の都合を優先してツアーをキャンセルするとか、ライブ中に客がケンカしてたら演奏を止めるとか。それって、今までの自分の価値観をぶち壊すものだったし、「そんなスタイルを打ち出せるんだ!?」って、ものすごい勇気をもらったんですよね。
--Fugaziは、その音楽性以外の部分でも強固なスタイルを持ってますね。
谷ぐち 結局、彼らは自分たちでいちいち考えて、バンドのあり方を一つ一つ決めてってるんですよね。要はパンクというものをはじめ、あらゆることに誠実。だから、Fugaziのやることには説得力がある。誠実さが音に直結してる。俺もそういうスタイルに憧れるし、そういうバンド的な発想を家庭とか子育てにそのまま持ち込んでるだけなんです。大石さんが言うところの「事件」が起こったら、それに対して何か自分なりのアプローチを考えて、そうすることで自分のスタイルを確立していけないかって、手探りで前に進んでってるだけ。その中で、ちょっとシャレが利いてて笑えるっていうのが自分としては一つポイントではあるんですよね。
大石 夫婦ゲンカしたり共鳴くんが泣いたりしても、最終的にはみんな笑ってるんですよ。そういうのを毎日のように見てたら、自分も「こういうときは、こう切り返せば楽しくなるんだ」っていうのがだんだんわかってきて。映画を撮り始める前は、私は相当ネガティブな人間だったんですけど、1年間密着して、かなり変わりましたね。あと、自分のスタイルを持ってる人って、それをひけらかしたり、他人に押し付けたりしがちじゃないですか。最近はSNSでもそういう人を見かけますし。でも、谷さんは一切そういうところがなくて、完全に「ヨソはヨソ、ウチはウチ」なんですよね。しかも「ヨソ」のスタイルも尊重してる。
谷ぐち スタイルを作る方法って人それぞれだし、俺のやり方はその一つでしかないんでね。ただ、試写会の感想を聞いたりすると、みんな結構面白がってくれてるんですよ。その反応自体が意外というか、自分も面白くて。だから、いろんな人がそれぞれの感じ方で、パンクの方法論を生活に落とし込んでるウチみたいな家庭を珍しがったり、あるいは「いや、それは違うだろ」みたいに反発したりして、生きてくうえでの何かしらのエッセンスになったらいいなと、今は思ってますね。
■『MOTHER FUCKER』
●公式ホームページ http://mf-p.net/
9/8(金)まで渋谷HUMAXシネマにて
9/9(土)~9/15(金)|シネマート心斎橋
9/16(土)~9/22(金)|シネマート新宿
9/23(土)~9/29(金)|名古屋シネマテーク
9/30(土)~10/6(金)|広島・横川シネマ
10/14(土)~10/20(金)|横浜シネマ・ジャック&ベティ
10/21(土)~10/27(金)|仙台・桜井薬局セントラルホール
10/28(土)~11/3(金)|京都みなみ会館
以降 神戸・元町映画館 他 全国順次Fuckin’公開中!
■大石規湖
フリーランスとして、SPACE SHOWER TV や VICE japan、MTV などの音楽番組に携わる。また、トクマルシューゴ、 DEERHOOF、BiS階段、奇妙礼太郎など国内外問わず数多くのアーティストのライブ DVD やミュージックビデオを制作し、女性でありながら男勝りのカメラワークで音楽に関わる作品を作り続けている。映画『kocorono』(2010年・川口潤監督)では監督補助を担当。また谷ぐち順の初MVの監督も務めている。
■谷ぐち順
Less Than TVの代表ではない何か。介助者。一応、フォークシンガー。
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2024.10.02 20:00心霊25年間正体不明の謎の音楽レーベルに密着取材! 映画『MOTHER FUCKER』が激しく素晴らしい作品である理由(監督対談)のページです。須藤輝、MOTHER FUCKER、大石規湖、谷ぐち順などの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで