何かをあきらめるのを、子どものせいにしてないか
何かをあきらめるのを、子どものせいにしてないか ― 家族全員がパンクロッカーの日常を追ったドキュメンタリー映画『MOTHER FUCKER』がヤバイ
25年にわたり、ある意味で正体不明、謎の集団として日本のアンダーグラウンドシーンで暴走し続ける音楽レーベル“Less Than TV”(以下:レスザン)。パンク/ハードコアを基調としながらも、1992年の設立からU.G MAN、GOD’S GUTS、DMBQ、bloodthirsty butchers、ギターウルフ、BEYONDS、ロマンポルシェ。など多彩かつ一癖も二癖もあるバンドの音源をリリースし、そのレーベルカラーを言語化するのは困難を極める。
そんなある意味謎のレーベルの代表である谷ぐち順と、その妻・YUKARI、そして一人息子である8歳の小学生・共鳴(ともなり)の日常に1年間密着したドキュメンタリー映画『MOTHER FUCKER』が、8月26日より公開中だ。その内容は、いわゆるロックドキュメンタリーとは一線を画す、かなり珍しいタイプの「家族の物語」に仕上がっている。トカナでは監督の大石規湖と、主演の谷ぐち順にインタビューを実施。『MOTHER FUCKER』はいかにしてできあがったのか、たっぷりと話を聞いた。【前回記事はコチラ】
■俺、普段からものすげえ怒られてるから
――谷ぐちさんはレスザンの映画を作るにあたって、ご自身の生活に密着されることに抵抗はなかったんですか?
谷ぐち代表 なかったですね。ありのままを撮ってもらいたくて。
大石監督 最初、谷さん(谷ぐち)に「監視カメラみたいなので撮れない?」って言われたんです。さすがにそこまではしませんでしたけど、それくらい開けっぴろげなマインドで迎えてもらいました。
谷ぐち だから要望とかも特になかったんですけど、強いて言えば、俺がYUKARIに怒られてるところは撮ってほしかったんですよ。なぜなら、普段からものすげえ怒られてるから。あと、過去にフォーカスしたり、自分をレジェンド化したりっていうのが嫌だったんです。“自分は”ですよ、ほかの人がやるのはぜんぜん構わないんだけど、一応、俺は現役でやらせてもらってるし、「昔はすごかった」っていうのは単なる錯覚で、今のバンドのほうがかっこいいし。音楽は進化するものだから。

大石 あの、申し上げにくんですけど、谷さんの日常を撮ってたら、どう編集してもレジェンド感は出ないですから。
――すごくいいことを言ってるのに思いっきり部屋着だったり、ズボン履いてなかったり。
大石 明け方に台所に立って話してるシーンとか、よく見てもらえればわかるんですけど、谷さん普通に股間をいじってるんです(笑)。
――開けっぴろげだ(笑)。
谷ぐち あれはね、大石さんの撮り方がうまいっていうか、カメラがあるのを意識させないように撮ってくれてるから。で、さっき過去の話は嫌だって言ったんですけど、すげえ怒られてるときだけは「俺はLess Than TVというレーベルを20年以上やってきて、数々のバンドの音源をリリースして、かつてはU.G MANていうバンドでストレンジハードコアのオリジネーターとして活躍してたりしてたんだけど……」って、過去にすがるときがあるんです。
大石 あっはっはっは!(笑)
谷ぐち 「なのに、なんでこんなに怒られてるんだろう?」って。そうやってなんとか自分を保とうとするくらい怒られてるんで、そこはやっぱ入れたかったですね。
大石 谷ぐち家にとってYUKARIさんの存在はほんとに大きいんですよ。家庭のことでもバンドのことでも同じテンションで怒って、お茶の間でもライブハウスでも同じテンションでケンカしてるんです。すべてのことに対して全力でぶつかっていく姿勢が、谷ぐち家をより一層谷ぐち家たらしめてるんじゃないかって。
谷ぐち 単にめちゃくちゃ怖いだけでしょ。
大石 それ絶対あとで怒られますよ(笑)。
■何かをあきらめるのを、子どものせいにしてないか

――YUKARIさんは、共鳴くんに対しても常に全力ですよね。特に共鳴くんのバンド活動に関しては、ときに恐ろしく厳しいんですけど、それも共鳴くんを愛しているがゆえ。
谷ぐち 愛、感じますか?
――めちゃくちゃ愛してますよね?
谷ぐち 愛してますね。
大石 正直、YUKARIさんの厳しさにびっくりしちゃう人もいるかもしれないって思ったんです。特に、お子さんをお持ちの方は。でも、YUKARIさんもバンドマンで、共鳴くんも自分で結成したチーターズマニアというハードコア・バンドでボーカルをとるバンドマンなんですよね。つまり親子でありバンドマン同士でもある。そこが谷ぐち家の一番特異なところであり、面白いところでもあって。

谷ぐち YUKARIもね、相当悩みながらやってはいるんですよ。
大石 YUKARIさんて、ほんとに素直で、撮り初めからいろんなことを包み隠さず喋ってくれたんです。例えばインフレンザにかかった共鳴くんを家に残して、自分たちはツアーに出なきゃいけいって悩んでるシーンもその一つで。だから私もYUKARIさんに感化されて、だんだん親戚のおばちゃんみたいな目線で共鳴くんを見るようになっちゃって。そのくらい愛情が溢れてるんですよ。
――YUKARIさんは、共鳴くんが生まれたときにバンドをどうするか悩んだけど「やりたいことをやらないのをこの子にせいにしていいのか」「そんな母親を息子はどう思うだろうか」と思って続けることにした、みたいな話もされてましたよね。あれ、超かっこいいです。
谷ぐち あれは、俺にはない発想だし、「なるほどな」って思いましたね。意識的にせよ無意識的にせよ、何かをあきらめるのを子どものせいにしちゃってるパターンて、結構あるのかなって。それよりも、YUKARIは自分のやりたいことを選んで、やりたいことをやってる姿を見せることで、子どもに何かもっと大きなものを伝えようとしてると思うんです。っていうか、実践してますね。
大石 「新しい母親像」と言ったら大げさかもしれないですけど、今までになかった母親なり女性の代弁者になり得るんじゃないかと私は勝手に思ってるんです。男性でもYUKARIさんの言葉に共感する人は多くて。一方、谷さんに共感したっていう話はあんまり聞かなくて、「谷さんの境地は凡人にはわからない」っていう人も(笑)。
谷ぐち あ、そう?
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