名越啓介写真集『Familia 保見団地』(世界文化社)より
――いいが写真撮れてきた時期というのは?
名越「普通の日常がずっと続いているだけだから、いいものが撮れたという実感は全くなくて。東京で仕事があるときに編集者の浅原裕久さんに『仲間内の誰かがカメラ渡されて撮っているみたいだね』といわれて、そういう視点でも見えるんだと気がつきました。日常の中に見え隠れするものって、人によってそれぞれ見え方が違うんです」
――何かを悟った感じということですか?
名越「そうですね。保見団地って、人種も様々、写真も様々、そこに社会問題をみる人も様々、そんな多面性が保見団地の面白さなんだなって。それを思えばこそ、ひたすら撮りまくってたら、写真集にまとめる作業がまた大変でした(笑)」
(後編につづく)
名越啓介写真集『Familia 保見団地』(世界文化社)
『Familia 保見団地』
写真家・名越啓介/文章・藤野眞功
価格 2980円(税別)
発行 Vice Media Japan
販売 世界文化社
・http://www.vicejpstore.com/
月並みこそ黄金。写真家・名越啓介とノンフィクション作家・藤野眞功が3年間の住み込みのもと、生まれた写真集。舞台は愛知県豊田市にある保見団地。1990年の入管法改正以来、外国籍の住人(主に日系ブラジル人)が約3000人ほど暮らす地域でのドキュメンタリー・記念。愛情、友情、食欲、家族、別れ、また赤ん坊ー。日本人、ブラジル人、何々人、ヒップホップ、スケートボード、暴走族、卒業式、恋愛、争い、逮捕、結婚、成人式、カーニバル、盆踊り、バーベキュー、団地脱出、家庭料理、牛肉、豚肉、鶏肉、成長 …。67棟にも及ぶ巨大な団地で、たびたび訪れる春夏秋冬、出会った喜怒哀楽を記した1冊には、過ぎ去った日々の尊さと失われゆく自由への渇望が綴られる。
名越啓介(なごし・けいすけ)
1977年奈良県生まれ。大阪芸術大学卒。過去にリリースした写真集に、「EXCUSE ME」(TOKIMEKIパブリッシング)、「CHICANO」(東京キララ社)、「THE BLOOD OF REBIRTH」(USEN)、「SMOKEY MOUNTAIN」(赤々舎)、『笑う避難所』(集英社新書)、「BLUE FIRE」(少年写真クラブ)、「Sing Your Own Story 山口冨士夫写真集」(ロフトブックス)などがある。
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