世界の“クレイジー”を巡り尽くした男・ケロッピー前田インタビュー! 死体の冷凍保存、怪僧ラスプーチンのイチモツ、ロシアのタトゥー…!

世界のクレイジーを巡り尽くした男・ケロッピー前田インタビュー! 死体の冷凍保存、怪僧ラスプーチンのイチモツ、ロシアのタトゥー…!の画像7※ケロッピー前田氏(撮影・福田光睦)

■中学1年でネッシーを探しに!? ある意味クレイジーな情報ハンター

――デンマークの謎の自治村・クリスチャニアやドイツ・グーベンの人体標本の研究所……。とても不思議な場所なのですが、自分では見つけられる気がしません。どのように情報を仕入れているのですか?

前田 本の帯には“クレイジーハンター”と書かれていますが、僕が一番得意にしているのが情報収集なんです。『今を生き抜くための70年代オカルト』(光文社新書)というオカルト本を書くきっかけにもなった出来事ですが、その原点は僕が中学1年のときにネッシーを探しにネス湖を目指して渡英したことにありました。バスでエジンバラまで行きましたがネス湖まではたどり着けなかった。たまたまイギリスに親戚がいたので行ったんですけどね。テレビでネッシーを見て「スゴいな」と思った子どもはたくさんいたと思うんですが、僕はそこに行こうとするタイプだったんです。それは今に始まったことではなく、子どもの頃からあるんです。


――この本にも情報収集能力はいかされていますね。

前田 例えばロシアの取材に関しても、前情報はほとんどありませんでした。もちろんロシアの観光地ツアーはあります。でも日本からロシアに行くにはビザも必要ですし、観光ルートから外れると、いきなり難易度が上がるんです。たとえば、バックパッカーの日本人が勝手に電車を使ってロシア国内を旅していたらスパイに間違われて、警察や軍に拘束される可能性もあります。観光エリア以外で、カメラを持っていたら罰金を払えと言われてしまう環境です。このときは、タトゥーの取材でサンクトペテルブルクのタトゥーコンベンションに行こうとしていたんですが、ネットの英語情報では「いつごろ、ここら辺であるらしい」ことしかわからない。ロシア語で検索しても日程と場所が確定できないんです。サンクトペテルブルクに行けばなんとかなるかなと思いましたが、日程や場所がわからないのでは現地まで行くリスクが高い。ロシア人の知り合いもいないので、最初は困っていました。そこで思いついたのは、アムステルダムに彫り師の友達も多いので、アムス経由でロシアに行けば、アムスで英語ができるロシア人の彫り師を紹介してもらえるんじゃないかということでした。実際、うまくいきましたよ。


――いや~。さすが情報ハンターですね。

前田 実際、サンクトペテルブルクに行ってみてわかったのは、ロシア当局はカルチャーイベントに人が集まることに敏感なのです。だから、1、2週間前にならないと日付、場所をはっきり公表しないということでした。実際にタトゥーコンベンションが行われたのは、とてつもなく大きな会場で、1万人もの観客が集まりました。会場の中には、タトゥーのイベントをやったアリーナの他に、映画を上映するシアター、バンドのライブ演奏する巨大ステージ、中庭には野外レイブをやれるほどのスペースがありました。そんな大規模なイベントが、ほんの1週間前に告知されただけで、ロシア全土から観客や出演者を集めてしまうというのが衝撃でした。また、ロシアのタトゥーというのはリアリスティックで絵画的なのでレベルが高いんです。お客さんの要求も高く、社会主義国の芸術教育がしっかりしているのを感じました。

世界のクレイジーを巡り尽くした男・ケロッピー前田インタビュー! 死体の冷凍保存、怪僧ラスプーチンのイチモツ、ロシアのタトゥー…!の画像8コンベンション最大の見所はタトゥーコンテスト、集まった観客が次々に自慢のタトゥー作品を披露していく『クレイジートリップ』より

――他に本に書けなかったことは?

前田 海外のタトゥーコンベンションは一般的に昼12時から夜の12時ぐらいまでが多いんですよ。でも、ロシアはなぜか夜の9時で時間通りにきっちりと終了します。それは、電車が終わるのが深夜0時ぴったりなので、夜の9時から12時までが、若い恋人たちのラブリーなタイムとなっているんですよ。サンクトペテルブルクの街中にカップルがあふれていました。ロシアって貧富の差もあるし、兵役も厳しくて過酷な国ですが、男女関係についてはリア充でした。国の風潮としてもそういうところを充足させようと頑張っているように思えました。イベント主催者もわざわざ、恋人たちの時間を3時間取っているぐらいですから。とにかく週末の夜のサンクトペテルブルクは恋人たちの街でした(笑)。


――それこそ海外のタトゥー取材とかって怖い目にあったりしないんですか?

前田 もちろん、見るからに怖そうな人たちともかかわってきましたけど、なんでも組織のトップの人は紳士的です。だから、カルチャーの現場を追う旅というのは、犯罪現場に潜入するのとは全く違うことなんです。もちろん仲間かどうかというところで排除されてしまう場合もあるかもしれませんがね。たとえば、先住民族の取材でも「この人たちがやっていることはカルチャーだ」という認識で自分から歩み寄ることが大事です。リスクがあるかもしれませんが、懐に飛び込まないと見せてもらえないことも多いんです。そういう意味でも情報収集は重要です。日本は治安が良すぎるので、事前にしっかりと情報収集できない人は海外で無理をしない方がいいとも思います。

後編に続く】

■松本祐貴(まつもと・ゆうき)
1977年、大阪府生まれ。編集者・ライター・世界のマイナー酒・居酒屋研究家。大学在学中からライターをはじめ、その後、雑誌記者、出版社勤務を経てフリーで活動する。テーマは旅、酒、サブカル、趣味系など多数。著書『泥酔夫婦 世界一周』(オークラ出版)が発売中。
・ブログ~世界一周~旅の柄:http://tabinogara.blogspot.jp/

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文=ケロッピー前田

1965年、東京都生まれ。千葉大学工学部卒、白夜書房(のちにコアマガジン)を経てフリーに。世界のカウンターカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『BURST』(白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。その活動は地上波の人気テレビ番組でも取り上げられ話題となる。著書に『クレイジートリップ』(三才ブックス)、『クレイジーカルチャー紀行』(KADOKAWA)、責任編集『バースト・ジェネレーション』(東京キララ社)など。新刊本『縄文時代にタトゥーはあったのか』(国書刊行会)絶賛発売中!

公式twitter:@keroppymaeda

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