生須芳英(撮影=酒井透)
「私は、現在の北朝鮮の輝きを永遠にしたいと考えています。美術史の観点から申し上げますと、これらの作品は、1910年代半ばに起こったヨーロッパの芸術運動のダダイズムに通じるものがあります。ダダイズムには、ユーモアがあります。第一次世界大戦では、国家総動員体制によって強制徴兵された人たちが大勢いました。この戦争では、新兵器や機関銃が導入されたことによって死体の山ができました。レジェという画家は、『戦中にモップで血と死体をかき集めたことがあるよ!』と話すような人です。そうした時代背景の中でピカビアという画家は、機械の油圧ピストンをキャンバスに描いて「女」というタイトルをつけています。新しい機械兵器の残酷さを背景にしたユーモアです。私の作品もそれと同じです。国際情勢の中における悲惨さを見つめながらユーモアを感じさせるものとなっています。そして、モニュメントとして1000年間残り続けるものと思っています。こうして作品を切っているのには意味があります。切断芸術といいます」(生須芳英)
生須さんは、テーマが美術史に及ぶと、突然、快活に話を始めた。その姿は、ナヨナヨとしていたが生き生きとしてもいた。彼は、美術史家体質なのだ。