日本人が知らないイスラーム世界の実像・徹底解剖! コーランにはヴェールを被れとは書いていなかった!(東洋文化研究所・後藤絵美インタビュー)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • コメント1
関連キーワード:

,

,

■イスラームの服装「コーランにはヴェールを被れとは書いていない」


日本人が知らないイスラーム世界の実像・徹底解剖! コーランにはヴェールを被れとは書いていなかった!(東洋文化研究所・後藤絵美インタビュー)の画像4撮影・松本祐貴

――後藤先生はイスラームの被服も専門ですよね。

後藤 装いについてコーランに書かれていることをどう解釈するかはさまざまなんですね。

「女の信仰者にも言え、慎み深く視線を下げて隠すべき部分を大切に守るように。表に出ている部分はしかたないが、そのほかの美しい部分は人に見せぬように。胸には覆いをかぶせて」(24章30、31節)

 コーランにはこうした言葉があるだけで、必ずしも「ヴェールを被れ」とは書いていないんです。ただ、これを読んで「ヴェールを被れと書いてある」と理解する人もいます。人によって解釈が違うのです。実際にいろいろな服装の人がいますからね。

 男性のヒゲも、口ひげではなく「アゴヒゲを伸ばせ」というのがハディース(ムハンマドの行動に関する伝承・伝記のようなもの)にはあります。「口ヒゲは剃ること」という言葉もあるので、厳密に言えば違反している男性もいるかもしれないです(笑) それでも、女性の服の場合だけいろいろいわれてしまうんですね。

――地域によって、女性の服に対するルールが違うのは、コーランの解釈の問題ということでしょうか?

後藤 それもあるし、その時代にどういう人が力を持っているかなんですね。1970年代のイランでは、女性は西洋風のファッションをしていました。ただし、1979年のイラン革命後、チャドルという顔だけ出す服やヘジャブというスカーフ着用が義務付けられています。では、1970年代のイランの女性はイスラームに違反していたのか? そうとは言い切れないかもしれません。違反してれば、みんな地獄にいっちゃうわけですから……。

 それを私たち研究者が「女性は髪を隠すのが正しいイスラームで、自由な服装は間違っています」と言ってしまうと世界で今、ヴェールをかぶっていない人が批判されたり、生きづらくなったりしてしまう。そうした考え方が日本人の間には広まらないようにしたいと思っています。

――コーランに書かれた「美しい部分」をいろんな風に受け止める人がいるんですね。

後藤 そこも難しいんですよ。もし、美しい部分を選ぶ選択肢1、2、3、4があったとしますね。でも、その選び方が論理的じゃなかったりするんです。「ある時突然、神様からビビビときて、私はヴェールをかぶりました」とか言い出すんですね。そこは「神様と私」の世界なんです。

――意外にオカルトな側面もあるんですね。でも、実際はサウジアラビアなど戒律に厳しい国では、女性は全身を覆う服を着ないと逮捕されますよね?

後藤 そこは社会的制裁の話になります。ムスリムの中にはふたつのルールがあって、ひとつは「神様と私」のルール。それを破ると来世で地獄に行ってしまう。もうひとつは社会がこうすべきだというルール。それを破ると社会の中で制裁を受ける。

日本人が知らないイスラーム世界の実像・徹底解剖! コーランにはヴェールを被れとは書いていなかった!(東洋文化研究所・後藤絵美インタビュー)の画像5撮影・松本祐貴

 ただし、こちらは神様からの制裁につながるかどうかはわからない。私としては、服装も食べ物もそうですが、多様性を許容する世界に向かえればと思っています。だから、本の中ではムスリムの中にもいろんな人がいるという書き方をしました。

 基本的な教えから服装、性に至るまで普段あまり知ることのないイスラームの一面が垣間見れるインタビューとなったのではないだろうか? テレビをつければイスラーム原理主義者らがあたかもムスリムの代表のように扱われているが、彼らの主義主張は『コーラン』や『ハディース』の数多ある(誤)解釈の1つでしかない。『イスラームのおしえ シリーズ1 イスラームってなに?』(かもがわ出版・監修:長沢栄治/著:後藤絵美)の出版を機に、歴史的・文化的に豊かなイスラーム世界の実像が少しでも我が国で認知されることを願うばかりである。

 イスラーム世界の女性の権利を語ってもらったインタビュー第2回はコチラ
(取材・文=松本祐貴)


◆後藤絵美(ごとう・えみ)
東京大学日本・アジアに関する教育研究ネットワーク特任准教授、東洋文化研究所准教授(兼務)。専門は西アジア・中東地域研究、イスラーム文化・思想、服飾文化史。東京大学総合文化研究科博士課程修了。学術博士。2003年から5年に平和中島財団奨学生としてエジプトに留学、カイロ・アメリカン大学女性・ジェンダー研究所に研究員として在籍。2015年から現職。著書『神のためにまとうヴェール―現代エジプトの女性とイスラーム』(中央公論新社)『イスラームのおしえ』(かもがわ出版)など多数。


◆松本祐貴(まつもと・ゆうき)
1977年、大阪府生まれ。編集者・ライター・世界のマイナー酒・居酒屋研究家。大学在学中からライターをはじめ、その後、雑誌記者、出版社勤務を経てフリーで活動する。テーマは旅、酒、サブカル、趣味系など多数。著書『泥酔夫婦 世界一周』(オークラ出版)が発売中。・ブログ~世界一周~旅の柄:http://tabinogara.blogspot.jp/

関連キーワード

コメント

1:ファーティマ 2017年12月18日 17:11 | 返信

最も大事な教義「ラーイラーハイラッララー」(アッラーの他に神は無しor神は唯一なり)を死ぬときまで信じていた者は例え悪行が勝り地獄に落とされたとしてもいずれ許されて天国に行くとあるようです。

コメントする

画像認証
※名前は空欄でもコメントできます。
※誹謗中傷、プライバシー侵害などの違法性の高いコメントは予告なしに削除・非表示にする場合がございます。