今の日本に“尖った生き方”をしている人がいない理由とは? 鬼才映画監督・原一男が怒りのインタビュー

■作品づくりは、「世直し」の感覚で

――では、やはり、「怒り」というものが作品づくりの原動力となると。

原監督 怒りと「世直し」という意識ですね。

 私が作品をつくる時は、その作品の社会性というものを常に意識してきました。そしてそこには、私たち世代特有の、世直しという感覚があるんです。映画を発表することで、「社会のこの部分はおかしいんじゃないか?」「こういう考え方はどうだ!」と世に問うという感覚です。

『水俣-患者さんとその世界-』などの作品を撮った土本典昭さんなど、私たちより前の世代のドキュメンタリー監督の影響も大きいと思います。土本さんは、作品づくりやそれを中心に据えた運動を、「革命」というイメージで説明していたくらいです。そういった人の空気感を知っているから、世直しという言い方もしっくりくるのかもしれません。

 私は昭和20年生まれで、戦後民主主義と共に生きてきた世代だという思いがあります。作品を作る時もそれを常に意識してきました。そして、私たちが、こういうことを言う、たぶん最後の世代なんです。だからこそ、戦後民主主義を体現してきたものとして表現に向き合い、作品を作り続けていくしかないと感じています。

――ありがとうございました。

『ニッポン国VS泉南石綿村』予告編「YouTube」より引用

 

今の日本に尖った生き方をしている人がいない理由とは? 鬼才映画監督・原一男が怒りのインタビューの画像6撮影=編集部

【プロフィール】

◆原一男監督
1945年、山口県宇部市生まれ。東京綜合写真専門学校中退後、養護学校の介助職員を勤めながら障害児の世界にのめり込み、写真展「ばかにすンな」を開催。1972年、小林佐智子と共に疾走プロダクションを設立。同年、『さようならCP』で監督デビュー。1974年、原を捨てて沖縄に移住した元妻、武田美由紀の自力出産を記録した『極私的エロス・恋歌1974』を発表。1987年には元日本兵の奥崎謙三が上官の戦争責任を過激に追究する『ゆきゆきて、神軍』が大ヒット。1994年、井上光晴の虚実に迫る『全身小説家』を発表。2005年、ひとりの人生を4人の女優が演じる初の劇映画『またの日の知華』を発表。映画を学ぶ自らの私塾「CINEMA塾」を不定期に開催している。


【劇場公開情報】

今の日本に尖った生き方をしている人がいない理由とは? 鬼才映画監督・原一男が怒りのインタビューの画像7c疾走プロダクション

原一男監督作品『ニッポン国VS泉南石綿村』

監督:原一男 
製作:小林佐智子
構成:小林佐智子 編集:秦 岳志 整音:小川 武
音楽:柳下 美恵 制作:島野千尋
イラストレーション:南奈央子
助成:大阪芸術大学 芸術研究所 JSPS科研費
製作・配給:疾走プロダクション
配給協力:太秦 宣伝協力:スリーピン

渋谷/ユーロスペース 絶賛公開中
横浜/シネマ・ジャック&ベティ 絶賛公開中
大阪/第七藝術劇場 3月31日より公開
大阪/シネ・ヌーヴォ 3月31日より公開
他全国順次公開

公式HP
http://docudocu.jp/ishiwata

取材・構成=山辺健史

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