映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』公開記念

母親が“ダイナマイト自殺”した男の死生観とは!? 伝説の編集者・末井昭インタビュー

母親がダイナマイト自殺した男の死生観とは!? 伝説の編集者・末井昭インタビューの画像3

――現代は、メンヘラといわれる人が多いじゃないですか。末井さんも当時としてはメンヘラだったんでしょうか?

末井「そうかもしれないね。メンヘラにみえないけど、メンヘラなんだよ。僕は自殺についてよく書いてきたけど、読んでくれる人にはメンヘラが多いんですよ。トークショーをやっても、質問したり、手紙くれたりする人もみんなそういうタイプの人だから。お互いに繋がっていくというのはありますね」


――映画ではエロ本全盛期の雰囲気がうまく表現されていたと思うんですけど、あの時代をどう思われますか?

末井「いまと比べると、緩い時代ですよね。たとえば、映画の冒頭でも警察のシーンが出て来ますけど、『なんだ末井か、また来たか』みたいなことを実際言われてたし、どうでもいい日常会話とか、冗談が交わされるみたいな人と人とのかかわりみたいなものはあったんですよ。でも、いまは当時のような警告はなくて、いきなり逮捕ですから。もっとキチキチと、警察と犯罪者って立場ですよね」


――あの時代、読者も雑誌をもっと応援してくれていたように思うんですが

末井「雑誌を買うことで応援してくれていたかもしれないけど。僕は警察と闘っているという意識はなかったですね。バカにするとか、おちょくるとか、もっと悪いかもしれないけど」


――荒木経惟さんや赤瀬川原平さんといった大物の方たちと仕事されていたのが凄かったですよね。

末井「当時は、そんなに有名じゃなかったんですよ。雑誌で連載してても『ガロ』みたいなマイナーな雑誌だったし。ギャラはそんなに払えなかったけど、みんな引き受けてくれました」


――皆さん、才能があって、その後に有名になられています。

末井「僕が目利きなんですよ。まず自分が読んで面白いかどうか、うまい下手とか、有名無名は全然考えてない。この人は面白い、この人つまらない、そういう判断ですよ。そのあと、みんな有名になっているわけだから、僕が面白いと思ったものを皆さんが認めてくれたということですよね」


――末井さんの面白いと思うというのはどういうことなんでしょうか?

末井「いろんな要素がありますけど、まず過激なものは面白い。そして、既成概念をひっくり返してくれるか。思想とか、イメージとか、絵でも写真でもいいんですけど、エッと思うもの、自分が変わるような、そういうものが面白いんですよ」


――ダイナマイト自殺をもう一度みたいに、刺激を求めてしまうということでしょうか?

末井「どうかな(笑)。それはわかんないけど、派手なものを求めているのかもしれませんよね。ダイナマイト心中って派手だもんね」


――派手ですね(笑)、笑っていいのかわからないんですが。

母親がダイナマイト自殺した男の死生観とは!? 伝説の編集者・末井昭インタビューの画像4末井氏の新刊『生きる』(太田出版)より

末井「爆発した現場はここらしいんですよ。(写真を見せる)これは地元の人に聞いて、(新刊『生きる』の編集者の)松田くんに撮りに行ってもらったんだけど」


――映画とそっくりですね。

末井「ここで爆発したとき、腸が木に引っかかってたりしたそうですが、クリスマスツリーみたいなものを想像しちゃいましたけどね(笑)」

まだまだ尽きない末井昭インタビュー、後編につづく

【上映情報】

母親がダイナマイト自殺した男の死生観とは!? 伝説の編集者・末井昭インタビューの画像5(C)2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』
出演:柄本 佑 前田敦子 三浦透子 峯田和伸 松重 豊 村上 淳 尾野真千子 ほか
監督・脚本:冨永昌敬
原作:末井 昭「素敵なダイナマイトスキャンダル」ちくま文庫刊
音楽:菊地成孔 小田朋美  
配給:東京テアトル
(C)2018「素敵なダイナマイト スキャンダル」製作委員会
2018年3月17日(土)より、東京・テアトル新宿、池袋シネマ・ロサほか全国ロードショー。R15+指定。

【公式HP】
http://dynamitemovie.jp

【末井昭】
1948年、岡山県生まれ。高校卒業後、大阪の工場へ集団就職。その後、上京して自動車工場勤務、デザイン学校入学、ディスプレイ会社勤務、キャバレー勤務、フリーの看板描き、イラストレーターと職業を転々とした後、1975年、セルフ出版(のちに白夜書房と改称)の設立に参加。編集者として『ウィークエンドスーパー』(1977年)『写真時代』(1981年)『パチンコ必勝ガイド』(1988年)などを創刊。2012年に白夜書房を退社し、現在はエッセイスト、フリー編集者、サックス奏者として活動。2014年、『自殺』(朝日出版社)で第30回講談社エッセイ賞を受賞。主な著書に『素敵なダイナマイトスキャンダル』(ちくま文庫)『結婚』(平凡社)『末井昭のダイナマイト人生相談』(亜紀書房)など、新刊『生きる』(太田出版)絶賛発売中!

※末井昭&ケロッピー前田イベント情報
6月4日(月)スペシャルゲスト 末井昭 (Live&Talk)
ケロッピー前田&DJ TKD with 姫乃たま
19:30~@千駄木Bar Isshee
http://www.bloc.jp/barisshee/

文=ケロッピー前田

1965年、東京都生まれ。千葉大学工学部卒、白夜書房(のちにコアマガジン)を経てフリーに。世界のカウンターカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『BURST』(白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。その活動は地上波の人気テレビ番組でも取り上げられ話題となる。著書に『クレイジートリップ』(三才ブックス)、『クレイジーカルチャー紀行』(KADOKAWA)、責任編集『バースト・ジェネレーション』(東京キララ社)など。新刊本『縄文時代にタトゥーはあったのか』(国書刊行会)絶賛発売中!

公式twitter:@keroppymaeda

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