盲目の人がLSDを摂取したら何が見えるか? 70歳の全盲ミュージシャンが語った“ブッ飛び体験”とは?

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■目の見えない人がLSDを摂取したら

 このように視覚的な体験がLSDの特徴とされるのだが、ではもし、目の見えない人がLSDを摂取したらどのような感覚を体験するのか? その答えに迫る興味深い論文が専門誌「Consciousness and Cognition」の今年4月号に掲載された。英バース大学の心理学研究者たちが、生まれつき盲目の老ミュージシャンに過去のLSD体験についてインタビューしたのである。

盲目の人がLSDを摂取したら何が見えるか? 70歳の全盲ミュージシャンが語ったブッ飛び体験とは?の画像2画像は「 Consciousness and Cognition 」より引用

 科学メディア「Live Science」の今月18日付の記事によれば、研究に協力したのは現在70歳の生まれつき目の見えない男性で、好きなLSDの種類にちなみ「ミスターブルーペンタゴン」と呼ばれているという。彼は1960年代、音楽活動中にLSDを使用しており、今回はそのときの経験をつぶさに語った。

 ブルーペンタゴン氏によると、LSDを摂取しても視覚的な幻覚はおろか光も闇も感じなかったという。代わりに、聴覚や触覚に強い幻覚が現れたそうだ。

「バッハのブランデンブルク協奏曲第三番の響きに、滝が落ちてくるような感覚を覚えました。私は魂が奏でるバイオリンの音を聞き、一時間もの間、様々な声色を使いながら一人でつぶやき続けていました。LSDは全てを高みに昇らせてしまうのです」(ブルーペンタゴン氏)

 研究者たちはブルーペンタゴン氏の経験と、「共感覚」と呼ばれる現象の共通性に触れている。共感覚とはある刺激に対して、通常の感覚だけでなく、異なる種類の感覚も覚える現象をいう。例えば、文字に色が付いたり、形に味を感じたりするという。これは脳の中でそれぞれの感覚を処理するネットワークの相互作用によるものではないかと考えられている。

 ブルーペンタゴン氏の経験も触覚と聴覚の共感覚といえる。LSDが共感覚を引き起こすことは以前より知られているが、多くは聴覚と視覚の共感覚だ。LSDが脳内でどのように働いているのかは不明な点が多いのだが、2016年に学術誌「PNAS」に掲載された論文によれば、LSDを摂取した人の脳内では視覚野が異常に活性化し、脳のあちこちで同期的な動きが観察されたそうだ。

 ブルーペンタゴン氏のように生まれつき盲目の人々では、聴覚や触覚といった視覚以外の感覚が発達することは良く知られている。触角と聴覚の共感覚という独特なLSD体験は、彼のそんな特異性に関連しているのだろう。LSDの効果の強さもさることながら、人間の脳の不思議さを感じさせる研究である。
(編集部)

参考:「Live Science」「Consciousness and Cognition」「PNAS」ほか

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