「次はどいつだ!」新幹線殺傷事件は25年前にもあった! 返り血、叫び声…MJ風の覚せい剤中毒者がナイフを振り回し…
――日本で実際に起きたショッキングな事件、オカルト事件、B級事件、未解決事件など、前代未聞の【怪事件】をノンフィクションライターが紹介する…!
「9号車で殺人事件が起こり、犯人が車内をうろついています。前後の車両に避難してください」
走行中の車内にそんなアナウンスが流れたのは、25年前。今、新幹線という密室での通り魔殺人が世間を震撼させているが、それは今回が初めてではない。
平成5年8月23日夜、博多発東京行きの東海道・山陽新幹線「のぞみ24号」9号車(グリーン車)では、男女4人が缶ビールを片手に談笑していた。大阪への日帰り出張の帰途に就いていた食品卸売り会社「国分」の社員たちだった。
静岡県の掛川駅を通過した、午後8時20分過ぎ。
「考え事をしたいので静かにしてくれませんか」
声をかけてきた若い男、中村克生(27歳・当時)の口ぶりは丁寧なものだった。
会話は特にうるさいものではなかったという、同乗していた客の証言もあるが、社員たちは男に言われるままに会話を止めたのだが……。
「やかましい!」
中村は叫びながら刃渡り30センチのサバイバルナイフを取りだし、「国分」埼玉支店長の松野定哲さん(40歳・当時)の左胸に突き刺した。
「次はどいつだ!」
返り血を浴びた姿で中村は、車内を逃げ惑う客を追う。9号車にいた客は前後の車両に逃れた。アナウンスによって危機を知った他の車両の乗客は、一部は押し合うように狭いトイレに入り身を隠した。それ以外の多くの乗客は、なすすべもなく恐怖に震えるばかりだった。
午後8時41分、列車は新富士駅に緊急停車した。ホームに警官の姿を見ると、中村はサバイバルナイフを手にしたまま、なんとか逃走しようと10号車、11号車へと移っていく。11号車の東京側出入り口から飛び出して、追ってきた警官に取り押さえられた。この時、中村は警官に1人の背を切りつけ、全治1カ月の重傷を負わせている。
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