ロシア軍機、味方から撃墜され15名死亡! 単なる“誤射”ではないイスラエルの恐すぎるサイバー陰謀とは!?
――軍事研究家・塩原逸郎が緊急寄稿!
2018年9月17日夜、シリア沖の地中海上空でロシア空軍電子偵察機IL-20がシリア政府軍(アサド政権)の地対空ミサイルS-200の誤射により撃墜された。ロシア国防省は18日、15名の乗員が死亡したことを公表すると共に、対シリア政府軍攻撃の為、現場周辺を飛行していたイスラエル空軍のF-16がIL-20を盾にしていた事が誤射の原因と主張した。
しかし、ロシアの主張はどうも不可解である。
まず、ロシアと軍事協力を行なっているアサド政権側は、敵味方識別装置(IFF)によりロシア軍機を識別可能であったはずだ。IFFは言わば合言葉を交わす装置であり、電波により信号を発信すると、自動的に応答の信号を送信し、敵味方を識別する。今回のケースでは、この装置が機能しなかったことになる。
次に、IL-20とF-16とでは、レーダーに映る大きさが異なる。IL-20は全長37mにも達する大型の機体であるのに対し、F-16のそれは15mと半分以下の大きさだ。レーダーには、当然IL-20の方が大きく、F-16は小さく映る。すなわち、アサド政権側はレーダーに映る大きさでもロシア軍機とイスラエル軍機を判別可能であったはずが、できなかったということになる。
IFFが機能しなかった事、レーダーに映る大きさで判別できなかった事、この2つの事項は何を意味するのであろうか?
筆者は、アサド政権側の防空システムがイスラエルのサイバー攻撃によりハッキングされ、偽情報を流されていたと分析する。イスラエルは、アサド政権側の防空システムにIL-20がイスラエル軍機であると誤認させ、地対空ミサイル発射に至らしめたのだ。
イスラエルは米国と共に、ニトロゼウスと称する対イランサイバー攻撃計画を推進している。ニトロゼウスは電力・通信・防空システムを対象としたもので、その計画の一部には、2010年の米・イスラエルによる対イラン核施設サイバー攻撃に実際に用いられた「スタックス・ネット」がある。
今回、イスラエルはニトロゼウス計画内の対防空システムサイバー攻撃ツールを、対アサド政権攻撃へと転用したと筆者は分析する。イランとアサド政権は双方、旧ソ連式の防空システムを運用している為、対アサド政権向けに攻撃ツールを転用するのは、技術的に容易な事だ。では、なぜイスラエルはこうした行為に及んだのであろうか?筆者は、今回のイスラエルのサイバー攻撃によるロシア軍機撃墜には、アサド政権とロシアとの間に楔を打ち込む狙いがあったと見る。
支配領域内にイスラエルの天敵であるイラン革命防衛隊を展開させたり、テロ組織であるヒズボラを支援しているアサド政権の存続は、イスラエルにとって大きな脅威である。そして、アサド政権の最大の後ろ盾はロシアだ。イスラエルは、アサド政権へのロシアの関与を中止させ、中長期的にはアサド政権の存続を困難にさせるべく、防空システムへのハッキングに踏み切ったのだ。15名もの人命が犠牲となり、中東を震撼させた撃墜事件の背景には、壮大な陰謀が渦巻いているのである。
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