ミイラになった哲学者ベンサムの“世界に散らばる20個の指輪”は今どこに!? まるでドラゴンボール… 研究者が奔走中!
■医学の進歩のための献体の先駆者
だが、ベンサムは決して、単なるお騒がせセレブではなかった。彼自身の悪趣味から己のミイラを大学博物館に展示しろと言い残したわけではない。「献体」として利用した後にディスプレイするよう申し出ていたのが史実だ。
ヴィクトリア時代、人体解剖は死者への冒涜としてタブー視されていたが、ベンサムは“死”に対する因習を解き放ち、医学の進歩のため自らの肉体を捧げたのだった。そして、解剖学の重要性を説いた彼の情熱は国を揺り動かし、彼が亡くなった年に「1832年解剖法」が成立、医学生らによる献体での解剖が可能となった。
「人は生きてるときも死んだ後も、何かの役に立つべき」というのがベンサムの信条で、周囲の者にも献体を勧めていたという。今の世の中なら驚くこともないが、ヴィクトリア時代には、なかなか理解されがたいキャラクターだったのではと想像する。
目下、ロンドン大学のベンサム研究者たちは、残り20点あるとされる指輪の行方を全力で捜索中だという。世界中のどこで見つかってもおかしくないベンサムの失われた指輪――19世紀のエキセントリックな偉人は、21世紀の今も人々のイマジネーションを刺激し続けている。
(文=佐藤Kay)
参考:「Live Science」、「Daily Mail」、「University College London」、ほか
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