クジラの耳くそには「146年分のストレス」が蓄積されていることが判明! 世界大戦や捕鯨… 苦しみの痕跡が発覚!
ザトウクジラやシロナガスクジラなどから採取された20個の耳垢を分析したところ、コルチゾール濃度にトランブル氏らを驚かせるほど明確な形で、人間がクジラたちに与えた影響が反映されていた。
まず目につくのは、捕鯨の影響である。1972年に米国で海洋哺乳類保護法が制定され、捕鯨に規制がかけられて以降、コルチゾールのレベルは明らかに低下していた。また、1939~45年にもコルチゾールの増加が見られた。これは第二次世界大戦の影響とみられ、飛行機や船、爆弾の騒音によるものと考えられる。
問題は、1990年以降、再びコルチゾールが増えていることだ。トランブル氏はその原因を海水温の上昇にあると考えている。気候変動は海の中の生物にも明らかな影響を与えていたのである。この論文は、今月2日付で専門誌「Nature Communications」に掲載された。
クジラの巨大な耳垢には、環境の変化によるストレスがはっきりと表れていた。トランブル氏はクジラの耳垢が環境変化を示す指標になり得ると考えており、さらに多くの耳垢を分析して、各個体の健康状態や死因についても考慮した上で研究を進めたいとしている。
資源としてのクジラには捨てるところがないと言われているが、耳垢にまでこのような価値があるというのは驚きである。しかし、クジラの耳垢から可視化されたのは、人間の文明が海に与えるあまりにも大きな影響であった。
(編集部)
参考:「Big Think」、「Nature Communications」、ほか
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