ベトナム戦争最大かつ最凶の残酷社会実験「10万人計画」とは ― 死亡率3倍、弱者兵士を前線へ

 ベトナム戦争中の1966年、ロバート・マクナマラ国防長官は「10万人計画」というプログラムを開始した。このプログラムは、米国陸軍の募兵基準を下げるために作られた。現在このプログラムは、ベトナム戦争の最大かつ恐らく最も残酷な過ちであったと言われる。


■ベトナム戦争中に行われた非人道的社会実験とは

ベトナム戦争最大かつ最凶の残酷社会実験「10万人計画」とは ― 死亡率3倍、弱者兵士を前線への画像1ロバート・マクナマラ元アメリカ合衆国国防長官 「Encyclopaedia Britannica」の記事より

 当時の大統領ジョンソンは、同プロジェクトは貧しい若者が貧困から逃れるために、兵役に加わるものだと表明した。しかしそれはあくまでも表面的なもので、最終的な目標は、より多くのベトナム戦闘員を送り込むためのものであったと言われる。

 米国では軍隊に加わることは、貧困からの脱出、より良い機会とより良い生活を手にする1つの方法だ。米国では貧しい家庭の若者も軍隊に何年か入ることで、除隊後、大学の高額な学費や職業訓練費用を国から払ってもらえる。また兵役では規律や目的達成法を教えられ、それは後の社会生活でも役立つと考えられ、軍経験者を優先して採用する企業も多い。

 軍への入隊は、適性と明確な目標を持つ人にとっては価値ある試みかもしれない。しかし、この「10万人計画」では、そのどちらも持ち合わせていない若者が戦場に送られた。

ベトナム戦争最大かつ最凶の残酷社会実験「10万人計画」とは ― 死亡率3倍、弱者兵士を前線への画像2 「Big Think」の記事より

 このプロジェクトによって、32万人を超える男性が徴兵もしくは希望入隊したが、そのほとんどが一度は軍隊資格試験で不合格になった者であった。

「New Standards Men(新基準の男性たち)」という呼び名が、「10万人計画」で入隊した新兵に与えられた。4割もの黒人以外で「典型的な」採用者となると20代前半の白人であり、その大半は小学6年生レベルの読み書きスキルと数学の能力を持つ高校中退者だった。

 これらの人々の中には身体に障がいがある者、過体重もしくは低体重もいたが、最も問題だったのは精神的に適性が低い者、多くの場合、精神的に障害を持っており、また多くは文盲であった。彼らは今までの基準だと「カテゴリーIV」に分類され、多くの者はボーダーラインもしくはわずかに「遅れている」と考えられた。通常、カテゴリーIVに入る候補者は、軍隊には適していないとみなされ、民間人としての生活に戻るように指導される。

 マクナマラ国防長官は、この「10万人計画」の導入が有益であることを立証する最良の方法は、彼らがこのプロジェクトによって採用された兵士であることを司令官から隠しておくことであると結論付けた。

 その結果、入隊後、「10万人計画」の兵士は他の兵士と同等に扱われた。彼らが最も多く割り当てられた軍事任務は、歩兵、砲兵、調理師、事務員、トラック運転手であり、圧倒的多数が戦地に赴いた。このプロジェクトの人事担当者は、秘密裏に兵士たちについて報告書を書き、戦地における彼らの進歩状況を文書化した。

 しかしその結果は、芳しくなかった。

「10万人計画」の兵士は、任務中に死亡する可能性が通常の兵士より約3倍高かった。しかしこれは予測できないことではなく、そもそも彼らは戦場に向かうにあまりに身体的および精神的な不備があり、前線で自分の身を守るための技術訓練にすら対応していなかった。

 彼らはまた、同僚兵士よりも再配置される割合が11回も高く、矯正訓練を必要とする確率は7~9倍であった。そして彼らが捕虜となる可能性も高かった。

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