放射性物質が残留した遺体を火葬した作業員が被ばく! 放射線が周囲に放出されて… “深刻な放射能リスク”が新判明!

■火葬に潜んでいた意外なリスク

 この男性が処方されていたソマトスタチンアナログは最近になってFDA(アメリカ食品医薬品局)で承認された放射性医薬品で(日本では未承認)、その取り扱いには厳重な規制が課されているが、亡くなった後の遺体まではその規制が行き届かないことが今回確認されたことになる。なお、火葬場の放射能汚染を初めて報告したケースになるということだ。

 次に研究者は火葬場の作業員たちの尿を検査したのだが、ルテチウムLu-177は発見されなかったものの、テクネチウムTc-99m(technetium Tc 99m)という別の放射能物質が発見されたのである。テクネチウムTc-99mもまた放射性医薬品として幅広く使われている薬品である。この作業員たちに誰一人として放射性医薬品による治療を受けている者はいなかった。

 作業員の尿からテクネチウムTc-99mが発見されたということは、今回の件だけでなくほかにも被ばくした遺体を焼却していた可能性も示唆されることになるのだ。

放射性物質が残留した遺体を火葬した作業員が被ばく! 放射線が周囲に放出されて… 深刻な放射能リスクが新判明!の画像3
画像は「Wikipedia」より

 今回の調査で検出された放射性物質の値はきわめて低く、直接人体に悪影響を及ぼすものではないものの、こうして現実に火葬場が放射能汚染しているという事実は深刻な問題となる。

「今回の件が、がんやその他の放射線由来の病気のリスクにつながる可能性があるとは思いません。そうは言っても、それが潜在的な被ばく源であることは明らかであり、継続的に(毎週または数日ごとに)被ばくしている場合には健康への懸念になり得るでしょう」と米マウントサイナイ医科大学のがん研究の専門家であるパオロ・ボフェッタ氏は語る。いずれにしても早急な規制の整備・導入が求められている。

 認可されている放射性医薬品はアメリカよりも少ない日本だが、遺体のほとんどが火葬であるだけに今回の件は当然無視できない問題となる。火葬に潜んでいたこの意外なリスクは広く共有されなければならない。

参考:「Science Alert」、ほか

文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
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