鬼畜、悪趣味、世紀末…90年代サブカルは令和で消滅するか? ロマン優光&姫乃たま&『BURST』軍団が緊急会議!

ケロッピー「そうだね。そして、『写真時代』と同じ白夜書房が出ていた『Billy』(スーパー変態マガジンとなったのは82年~)は、死体写真やスカトロを売りにしていた。釣崎清隆は読者として『Billy』を読んでいた頃から、それらの死体写真がいったいどこから調達されたものかが気になっていたというね」

「釣崎さんは当時から死体写真へのまなざしが独特だったんですね」

ケロッピー「そうだね。当時の死体写真の扱いは本当に雑だった。釣崎は写真につけられたキャプションがその死体の真実を語っていないことを意識していたからこそ、死体と真摯に向き合う方法として、自分自身が死体がある現場に赴き、写真に撮って作品にするという道を選んだと思うね」

「そうした前史を経て、90年代サブカルといわれる悪趣味、鬼畜、世紀末がブームとなっていったのは、95年くらいからですね」

ケロッピー90年代になると書店にサブカルの棚ができるんだ。それ以前から、80年代の『宝島』とか、カルチャー誌みたいなものはあったけれど、それがひとつのジャンルとして書店のある一画を占拠するようになるのは、やっぱり90年代になってから」

「『完全自殺マニュアル』(93年刊)とか、『磯野家の謎』(92年刊)、それに続く、『Quick Japan』(94年~)あたりでしょうか」

ケロッピー「そうだね。あと、実は90年代は日本の若者の数がすごく多かったんだ。それは数字で見ればわかることだけど、1970年代生まれに大きな山があって、その後はずっと減り続けてしまうんだ」

「90年代サブカルの元年といわれているのが1995年。第二次ベビーブームが終わる75年生まれの人たちがちょうど20歳だったってことですよね」

ケロッピー「そうだね。よく名前が挙がる出版物としては、『悪趣味洋画劇場』(93年刊)『スカム・カルチャー』(94年刊)『TOO NEGATIVE』(94年~)『ユリイカ臨時増刊号ー総特集・悪趣味大全』(95年刊)『危ない1号』(95年~)、その増刊として出た『鬼畜ナイト』(96年刊)、そして、『世紀末倶楽部』(96年刊)が続いた」

「中でも『危ない1号』の編集長だった青山正明さん、そのメインライターとして、『鬼畜のススメ』(96年刊)や『電波系』(96年刊:根本敬との共著)で名を上げた村崎百郎さんが90年代サブカルを象徴する二大巨頭になっていったわけですね」

ケロッピー「『危ない1号』が商業的に成功したことが鬼畜や悪趣味でサブカル雑誌を売ろうという風潮を生んだといわれるよね。95年にスタートした『BURST』もある意味そういう流れに乗っかる形で人気を得ていくわけ。そこでよく取り沙汰されるのが『鬼畜ナイト』、これはロフトプラスワンで行われたトークイベントをそのまま一冊にまとめたものだけど、すごくよく売れた。さらにその出演者に釣崎清隆や石丸元章がいることで、バースト人脈と90年代サブカルとの関係がよくわかるよね」

「僕もその頃は正直、釣崎さんの死体写真が見たくて『BURST』を買っていました。V&Rプランニングの『デスファイル』なんかもレンタルビデオで観てましたけど、そうした死体表現とは美学的なところで一線を画していましたから」

ケロッピー「その後、鬼畜、悪趣味、世紀末といわれるようなグロテスク表現だけが暴走していくことになるんだよね」

「一方、ケロッピーさんは身体改造カルチャーを広めていきましたよね」

ケロッピー「僕が『BURST』で身体改造を大きく取り上げ始めるのはゼロ年代に入ってから。たとえば、フランスの身体改造アーティスト、ルーカス・スピラの来日記事では、メスで皮膚を切って図柄を刻むスカリフィケーション(カッティング)を取り上げたので、流血の写真をたくさん載せている。いまなら閲覧注意とされてしまうかもしれないけど、やっぱり本物の血の赤って、綺麗だなって思っていたよ」

「当時の数ある雑誌の中でも『BURST』に関しては、グロテスク表現を扱ってはいても、単に悪趣味という印象はありませんでした。そこに作り手の思想や美意識が感じられたんです。だから好きだったし、正直なことを言えば、その他のただ悪趣味であることそれ自体が目的化したような雑誌や本にはあまり関心がなかったんですが」

ケロッピー「あと、ここでもう一人、佐川一政についても話しておきたいな。彼ががパリ人肉事件を起こしたのは81年だったけど、90年代サブカルのブームのなかでも、佐川一政は結構よく登場していた。やっぱり、佐川くんって、グロテスクなもののアイコンというか、とりあえずこの人を入れておけば、鬼畜になるみたいな」

「あ、僕は2008年に編集者になったんですが、実は自分でアポをとって初めて取材に行った相手が佐川さんだったんです。アダルト誌のモノクロコーナーのインタビュー記事でしたが。佐川さんは色々な意味で象徴的な存在ですよね」

ケロッピー「だから、TOCANAが今年夏に佐川一政のドキュメンタリー『カニバ』を公開することも、昨今の90年代サブカル議論の流れとシンクロしているんだよね」

「90年代サブカル議論においてはいろんな見解が入り乱れてますが、あらためて当時を振り返ることで鮮明になることも多いように思います」

ケロッピーグロテスクなものって、人間の本質に関わるものだからね」

※続きは、5月20日のイベント『90年代サブカル最高会議』にて。来てね~!!!

 

【イベント情報】

『バースト・ジェネレーション』 presents「90年代サブカル最高会議」

『バースト・ジェネレーション』 presents 90年代サブカル最高会議

 

【出演】ロマン優光(ライター/ミュージシャン)、姫乃たま(アイドル/作家)、釣崎清隆(死体写真家)、ピスケン(元『BURST』初代編集長/作家)、石丸元章(GONZO作家)、福田光睦(地下編集者)、ケロッピー前田(身体改造ジャーナリスト)

5月20日(月)OPEN 18:00 / START 19:00
前売¥2,000 / 当日¥2,500(飲食代別 ※要1オーダー¥500以上)
阿佐ヶ谷ロフトA(杉並区阿佐谷南1-36-16ーB1:03-5929-3445)
サポート:NPOヒューマンビーイングクラブ

 

『バースト・ジェネレーション』(東京キララ社)2000円+税
創刊号絶賛発売中! 第2号は2019年9月刊行予定!!

文=辻陽介[ウェブマガジン『Hagazine』 編集人]、文=ケロッピー前田

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