■クンブメーラの朝、サドゥの出陣式に震える
ーー『バガボンド』はプロローグ、サーカス団を中心に2006年から2013年の間に撮影した写真で構成した「VAGABOND 2006-2013」、2010年撮影のサドゥのポートレートをまとめた「SADHU 108 2010」、そして、2019年2月のクンブメーラの写真を詰め込んだ「DAYS OF KUMBH MELA 2019」という章立てです。いわば、名越さんが見て撮ったインドの総決算のような内容ですね。今年2月のクンブメーラの撮影について伺います。聖地サンガムの印象はどうでした?
名越 サンガムはアラハバードの郊外。ガンジス川とヤムナー川、伝説上に存在したサラスバティ川の合流地点。クンブメーラの期間中はあちこちにテントや宿泊施設が建って、マンハッタンくらいの広さの場所にインド全土から1億人が集まってくるんですけれど、寺院はあっても他には何もない砂浜の街? 川の中州が広がっていて、そこがクンブメーラの会場になります。普段は静かで心地いい場所なんだろうと思いました。
ーー宿泊はテントで?
名越 テントの中にベッドがあってシャワーがもついている、よく言えばグランピング。朝食付きで日本円で1泊2,000円くらい。セキュリティスタッフもいたし、汚いっちゃ汚かったけれど、割とちゃんとしている所ではありました。
ーー現地の人はどんな所に泊まっていたのでしょう?
名越 お金持ちはVIPルームがあるようなテントサイトに泊まったり、お金のない人は寺院で野宿をしたり。さまざまですね。
ーー巡礼者のための炊き出しもあったようですね。
名越 クンブメーラは政府や企業とがっちり繋がっているみたいなんです。政治家や企業がボランティアで食事を配っていたり、無料で歯を治療する施設とかもいっぱいありました。そこでファンを捕まえればかなりの票や利益に繋がるんでしょうね。