ーーサドゥが集まるテントサイトにも行かれたようですが、どんな場所でした?
名越 宗派ごとにキャンプが分かれていました。観光客も入れる場所もあって「サドゥ・ストリート」みたいな所は面白かった。そこではサドゥが並んでいて、弟子が客引きをしていて、巡礼者は気になるサドゥの所に言って肩をポンポン叩いてもらって厄を落とす、みたいな場所。サドゥが選び放題なんです。パチンコ屋みたいに電飾がキラキラしていて遊郭みたいな印象でした。
ーーテントの内部でも撮影していましたね。
名越 各宗派のグル達が山車の上に乗って大行進する日が45日間に6回あったのかな? その中でもメインの日で、ナガサドゥ(裸のサドゥ)のパレードがある朝、クンブメーラに出発する前の儀式の時にテントに入ることができたんです。
ーーどんな様子でしたか?
名越 すごい迫力でした。身体に白い灰を塗ったサドゥたちがグル(指導者)とマントラ(宗教的賛歌)を詠みあったり、目つきも全然違ったんですよ。「今から死にに行くぞ」くらいの勢い。もっと柔らかい感じかと思っていたけれど、死ぬ覚悟で何かに向かって行くように見えて、戦国時代の出陣式ってこんな感じだったんじゃないかと思いました。武将がいて、家来の武士がいて、それぞれのキャラが立っていて、みんなで円陣を組むみたいな。体感して身体が震えました。クンブメーラがすごい祭りなんだって思ったのはあの時ですね。正直な話、それを見るまではサドゥを小バカにしていたんだけれど。