ーーなぜですか?
名越 撮影を通していろんなサドゥを多少なりとも見てきたなかで、どう捉えていいかよくわからなかったんです。みんな裸で素性がわからない。「コイツらは何をするの?」って、理解しようと思っても難しい。世俗の人よりよほど俗っぽいサドゥもいたし。権力のあるグルのなかには町中にポスターが貼られていたり政治家と繋がっている人もいたんだけれど、僕が入れてもらったグループはそんなに大きな一派ではなくて、あの人たちは本当に戦国武将みたいだった。半信半疑で行ってみたもののすごくカッコよかったです。
ーーヒンズー教の聖地とか祝祭というと「異界」というイメージがあるのですが、異界感を感じることはありましたか?
名越 明け方、川にかかる橋の上を、どこに向かうのかわからない、同じ方向に歩いている巡礼者の姿とか、そういう風景を見ていて、そこが現実なのか非現実の世界なのかわからなくなることはありました。聖者と呼ばれる人たちが歩いている姿には異質なものを感じましたよ。「黄泉の国」というか。クンブメーラの人混みから外れた、地元の人しか入らないような静かな場所でも異界感は感じました。ガンジス川近くの火葬場の近くに行った時には、たまたま濃い霧に覆われていて、死臭がすごくて。