もしも消防署を民営化したら…「最恐の事態」が! 格差社会で貧乏人は家が火事になったら放火される!?
■村八分より酷い村十分
仲間はずれの例えに「村八分」という言葉がありますが、残りの二分は火事の消化活動と葬式の世話で、その二つだけはどんなヤツでも仲間はずれにしませんでした。
しかし、2010年秋に総人口5000人に満たない米テネシー州の田舎サウス・フルトン町で起きた火事では、消火活動での仲間はずれが起きました。
自宅が火事になったので911番(アメリカの119番)に通報したところ、消防署に消火を拒否されて家が全焼したのです。
しかも、延焼した隣家の人が通報したらすぐに消防車が来て、その家は消火してもらえました。最初の一軒だけは、全焼しても消防隊に無視されたのです。
消防隊が無視した理由は「消防税を払ってないから」でした。
フルトンはテネシー州とケンタッキー州の州境に位置し、消防署がケンタッキー州側にしかありません。町の真ん中を州境の境界線が通っているために、テネシー州側の地域はサウス・フルトン町という別の地方自治体になっています。このため、サウス・フルトン町で火事が起きるとケンタッキー州フルトン町の消防署が消火に来ます。
消防署の予算は地方自治体ごとに独立しており、ケンタッキー州フルトン町の消防署はフルトン町の予算で運営されています。テネシー州サウス・フルトン町はケンタッキー州フルトン町に消防予算を支払うことで消防サービスを受けています。この予算は住民から、消防税年間75ドルを徴収して支払っています。一方で、フルトン町には消防税が存在せず、支払わなくても消防車が来てくれます。
フルトン消防署は、消防税をきちんと払っているサウス・フルトン町の家のリストを作成しており、このリストに載っていない家は消火しないのです。
アメリカで普通に携帯電話から911番にかけると近くのオペレーションセンターにつながります。警察と消防は同じ番号なので、オペレーターは話を聞いてどっちに出動要請するかを判断します。日本でも救急車と消防車が同じ番号なのと同じ仕組みです。
さて、ここで要請を受けたフルトン町の消防署が取った行動を振り返ります。
まず、火災現場が自分の町ではなく隣のサウス・フルトン町なので、消防税を支払ってリストに載っている家かどうかを確認しました。すると、その家はリストに載っていません。なので、消防車は出動しません。この火事が隣の家に延焼し始めて隣の人が通報したところ、その家はリストに載っていたので、消防車が出動しました。
ここで同じテネシー州の隣町の消防署から消防車が来るというような親切は、アメリカ社会には存在しません。日本では考えられない公共機関の塩対応です。
こんなことになったのは1990年からで、それ以前は消防税を払わなくても普通に消防車が来てくれました。しかし、その年にサウス・フルトン町とフルトン町の間で消防の予算の問題が起き、サウス・フルトン町の住民は、一軒あたり消防税として年間75ドルを払わなければならなくなったのです。
火事で家が全焼した人は、消防税ができた後も納税するのを忘れていたようです。督促もされなかったのでそのまま放置していたら、20年目に家が火事になって消防署にスルーされてしまいました。
地図を見てもらえばわかると思いますが、州境を気にせずに普通に見たら、同じ町内に消防署があります。州が違えば法律も違うアメリカ社会で、町の変なところに州境があるために、南北に断絶しているのです。
州境がほんの10km南か北にあれば、このような悲劇というか珍劇は起きなかったのです。
地図上の都合で南北に分断されたフルトン町は、南が下級町民で北が上級町民という町内格差社会になったのです。
もしも、日本で消防署が民営化したら同じ悲劇というか珍劇が起きるかもしれません。社会の分断を生みだす国であっても、やっちゃいけない一線というものがあるのです。
参考:「Report on the Firefighter Arson Problem (PDF)」「NBC News」「Wikipedia」ほか
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