▪︎ニュースの現場と生活者の営みをフラットに写す
ーー写真集は2020年の2月から7月までの時系列で構成していますね。
初沢 出版が決まって2万5000枚くらい撮ったなかから250枚くらいをセレクトして並べたら自然とそうなったんです。多少前後する写真もありますが、半年間の流れを確認しながらページをめくっていくことが僕にとっても自然だったし、コロナ禍を追体験するという意味でも時系列でよかったのだと思います。
ーー写真集を見てまず感じたのは「意外と人が出ていたんだな」ということでした。緊急事態宣言後、東京から人がいなくなったという印象が強かったので。
初沢 場所によってだと思います。テレビで報道していたように、新宿や渋谷、銀座には本当に人がいなかった。でも、山手線からちょっと外れるとたくさんいる。地元の商店街では買い物をしたり散歩している。真昼間に開店していた居酒屋に人が溜まっていた風景も多かったですね。「自粛」というものの曖昧さ。それぞれがどこまで自分に規制をかけるかみたいな部分がありましたよね。コロナ禍前の3分の1くらいですけれど、実は人が出ていたというところに、ロックダウンにならなかった日本のコロナ禍が表れていますよね。
ただ、人が写った写真が多い一番の理由は、人がいないと風景写真になってしまうから。僕は風景写真に興味がないんです。それに、東京に住んでいると、人のいない街の様子は正月に見慣れているんですよ。そんなこともあって、僕はどうしても人に寄ってしまう。実際の街は、写真集ほど人は出ていなかったと思います。
ーー撮影はどのように進めたのですか?
初沢 ニュース番組を見て面白そうなトピックを探したり、SNSで情報を募集して、知り合いが教えてくれた場所に撮りに行ったり。ニュースになっている場所の情報を仕入れて撮りに行く合間に、周辺の街をスナップ撮影していました。
たとえば、品川の出入国在留管理局で撮った写真は、去年の6月に長崎の入管であまりに劣悪な待遇、環境にハンストで抗議した入所者が亡くなる事件があって、ずっと気になっていたんです。品川の入管の状況も漏れ聞いていたから行ってみたところ、すごく密な状態になっていて。