【岡本太郎現代芸術賞展レポート】史上最年少18歳がTARO賞! 人類の悲惨を描いた50枚以上の油絵、創作の喜びを“爆発”させた厳選24作家の力作

 緊急事態宣言が解除されたとはいえ、いまだに予断を許さぬコロナ禍にあるが、毎年恒例のTARO賞こと岡本太郎現代芸術賞には、昨年の応募総数を大きく上回る616点もの応募があったという。そのなかから24作家が選ばれ、川崎市岡本太郎美術館にて、第24回岡本太郎現代芸術賞展が開催中(4月11日まで)である。

 TARO賞は、「時代を創造する者は誰か」という岡本太郎の著書『今日の芸術』(1954年)のサブタイトルにちなみ、1996年、岡本太郎没(享年84歳)をきっかけとして設立された。彼の遺志を継ぎ、自由な視点と斬新な表現を追求するアーティストを発掘かつ応援しようというものである。この芸術賞は、賞歴、学歴、年齢を問わず、美術ジャンルも超えて、応募できるばかりでなく、最大で5メートル立方の空間を展示スペースとして使用できるところが特徴で、その“ベラボー”さこそがTARO賞ならでは醍醐味であり、作家の力量が試されるところである。今年は2月19日に授賞式が行われ、翌20日から4月11日までが展示会期となっている。

 今回、最優秀となる岡本太郎賞を受賞したのは、史上最年少の大西茅布さん(18歳)。《レクイコロス》とは、レクイエム(鎮魂)とコロナウイルスを組み合わせた造語で、5メートル四方の壁面を大小50枚以上の油絵で埋め尽くしている。

岡本太郎賞受賞:大西芽布《レクイコロス》

「人類の悲惨を作品化することに衝動を感じる」という作者のコメントの通り、それぞれの絵画作品はストーリー仕立てで、コロナ禍の出来事を含む、歴史上の悲惨な事件を連想させるものである。それでも、壁面を覆う膨大な作品群と実際に対峙することで強く感じるのは、描くことへの熱意と集中力、創作へのあふれ出るエネルギーである。現実の悲惨さを超えて、何かを創造していこうという力強さこそが、いまだコロナ禍にあえぐ私たちを揺さぶるのだ。

岡本太郎賞受賞:大西芽布《レクイコロス》(部分)
岡本太郎賞受賞:大西芽布《レクイコロス》(部分)

 一方、岡本敏子賞を受賞したモリソン小林の作品《break on through》は、すでに商業施設や店舗でアート作品を制作するベテランならでは完成度に魅了される。

岡本敏子賞受賞:モリソン小林《break on through》
岡本敏子賞受賞:モリソン小林《break on through》(部分)

 一見、白壁のホワイトキューブいっぱいに植物がツルを伸ばしているように見えるが、それらはすべて鉄を素材として制作された人工物。標本のようにフレームに収めらたはずの植物はニョキニョキとそこから這い出て、空間全体に広がっていく。金属の植物を「自分の存在と重ねようになり、一度枠から出てみたいと思った」と作者がいう通り、空間を遠慮なく自由に使い切った表現こそが感動を生んでいる。

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