【岡本太郎現代芸術賞展レポート】史上最年少18歳がTARO賞! 人類の悲惨を描いた50枚以上の油絵、創作の喜びを“爆発”させた厳選24作家の力作

 特別賞は、植竹雄二郎、牛尾篤、小野環、唐仁原希、浮遊亭骨牌の5作家が受賞した。

 植竹雄二郎《Self portrait》は、作者自身の顔をモチーフとした4つの彫刻作品からなる。それぞれ、一面、二つの三面、六面からなるが、カッと眼を見開いたり、舌先を怪しげに突き出したりと、その表情は同一人物のものとは思えないほど表情に富んでいる。

特別賞受賞:植竹雄二郎《Self portrait》
特別賞受賞:植竹雄二郎《Self portrait》

 牛尾篤《大漁鯖ン魚》は、図画的な連想で関連づけられた鯖とシマウマが生命感豊かに描き出された計7枚からなる絵画作品である。縞模様に象徴される視覚的なダイナミクスこそが鑑賞のポイントだ。

特別賞受賞:牛尾篤《大漁鯖ン魚》(部分)

 小野環《再編街》は、ネット時代に不要となった百科全書、美術全集を素材とし、過去に夢見られていた公団住宅や美術館を精巧な模型として再構成している。完成された建築物にも目を見張るが、興味深いのは建築現場のごとく仕立てられたミニチュア書籍や家具などである。細部に拘れば拘るほど、鑑賞者は小さな世界へと引き込まれていく。

特別賞受賞:小野環《再編街》
特別賞受賞:小野環《再編街》(部分)

 唐仁原希《紅のふもとには宝物はあるの》は、欧風な高級感を漂わせる真っ赤な壁面に、お姫様、王子様、動物たち、ユニコーンやシロクマなど、様々なアイコンに彩られた大判の絵画作品が並ぶ。この作品群にはどんなストーリーが隠されているのだろうかと思い巡らせてしまうが、作者は「作品を観た人が内容を読み解き、その人独自の物語を想像する」ことを想定しているという。それでも鑑賞者の宝探しは続く。

特別賞受賞:唐仁原希《紅のふもとには宝物はあるの》
特別賞受賞:唐仁原希《紅のふもとには宝物はあるの》(部分)

 浮遊亭骨牌《浮遊亭κοιλία(コイリア)》は、岡本太郎《母の塔》の傍に野外展示された軽トラックをベースとする「動き浮く茶室」である。作者は声が掛かれば、この作品で方々に向かい、油圧で茶室ごと空中に浮遊させ、香を焚き、お茶を嗜むことができるという。

特別賞受賞:浮遊亭骨牌《浮遊亭κοιλία》
特別賞受賞:浮遊亭骨牌《浮遊亭κοιλία》(内部)

 その他の作品では、計15台の自転車を素材に一人のパフォーマーが漕ぐと作品が大回転する東弘一郎、大量に家電が廃棄された隔離の場で風呂を楽しむ黒木重雄、巣篭もり生活で日々テレビで観た人たちを描いたながさわたかひろ、家に居ながらピクニックを楽しめる装置を作ったさとうくみ子、100もの別府市内の温泉を巡って撮影した写真を地図上にコラージュした西野壮平など、コロナの自粛生活にあって、創作する喜びを“爆発”させた力作が並んだ。

東弘一郎《回転する不在》(立体作品とともに展示されたビデオ作品)
さとうくみ子《家中ピクニック装置》
ながさわたかひろ《ウィズコロナの肖像》(部分)
黒木重雄《Distance》(部分)
西野壮平《別府温泉世界地図》

 パンデミックにあって、モヤモヤした気分で日々を送っている人たちも多いだろう。岡本太郎美術館を訪ね、太郎自身の所蔵作品やTARO賞展を体感し、鬱な気分を吹き飛ばして欲しい。

 

【展示情報】
第24回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展
2021年2月20日(土) ~ 4月11日(日)
川崎市岡本太郎美術館 開館時間:9:30~17:00(入館16:30まで)
休館日:月曜日、2月24日
公式HP http://www.taromuseum.jp/

【入選作家(50音順)】
東弘一郎、AYUMI ADACHI、植竹雄二郎、牛尾篤、袁方洲、太田琴乃、大西茅布、小野環、かえるかわる子、加藤立、金子朋樹、黒木重雄、さとうくみ子、許寧、園部惠永子、唐仁原希、ながさわたかひろ、西野壮平、原田愛子、藤田朋一、浮遊亭骨牌、みなみりょうへい、モリソン小林、山崎良太

 

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文=ケロッピー前田

1965年、東京都生まれ。千葉大学工学部卒、白夜書房(のちにコアマガジン)を経てフリーに。世界のカウンターカルチャーを現場レポート、若者向けカルチャー誌『BURST』(白夜書房/コアマガジン)などで活躍し、海外の身体改造の最前線を日本に紹介してきた。その活動は地上波の人気テレビ番組でも取り上げられ話題となる。著書に『クレイジートリップ』(三才ブックス)、『クレイジーカルチャー紀行』(KADOKAWA)、責任編集『バースト・ジェネレーション』(東京キララ社)など。新刊本『縄文時代にタトゥーはあったのか』(国書刊行会)絶賛発売中!

公式twitter:@keroppymaeda

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