「人食いライオンの国」タンザニアのライオン事情を亜留間次郎が徹底解説! ライオンから見た人間は食べやすい餌だった!?
■ライオン殺し
タンザニアといえばライオンを殺すマサイ族が有名ですが、そもそも、マサイ族がライオンと戦うようになったのはなぜか、男が全員戦士になり働かないのが普通の文化はどうして生まれたのかといえば、ライオンから土地を奪って繫栄する生存戦略を選んだからです。
ライオンが繁殖できる土地は、草食獣が大量に繁殖できるような肥沃な土地です。こうした土地は人間にとっても豊かな土地なので、家畜を放牧して太らせて増やすことができます。土地が豊かなので少ない労働人口で大勢を養うことが出来るので、余ったマンパワーを「全てライオンを殺すこと」に投入する戦略を選んだのです。
だから男は働かないでも良くなりましたが、命がけで戦わなければならなくなりました。時代が進んでライオンが減って戦う相手が減ると、今度は増えすぎた人間同士でも戦うようになっただけです。
人類の闘争の歴史も、最初は人間同士ではなく、ライオンという天敵が対象だったのかもしれません。もしもライオンがいなかったら、人類はここまで戦争や略奪をしなかったかもしれません。
ライオンは肉食獣としては極めて巨大な肉体を持つため、ウサギのような小動物を狩っていたのではエネルギー収支が赤字になってしまうので、大型の草食獣を狩ります。「獅子は兎を捕らえるにも全力を尽くす」というのは真っ赤なウソで、現実には採算の悪い獲物は襲いません。
『ヤマアラシのジレンマ』なんかと同じで、ライオンを見たこともない中国の思想家が考えた言葉なので現実と合ってないのでしょう。
具体的には、ライオン1頭は1日に5~7kgの肉を必要とするので、一つの群が必要な食事量を満たすためには1頭の獲物に50キロ以上の体重が必要になります。
ライオンの心臓は小さく体重の0.5%ほどしかなく、これは馬などの草食獣の1%の半分ほどでしかなく、人間と同じぐらいの比率です。このため、大きすぎる体に対して心肺能力が不足しているので、戦闘力と引き換えに持久力が極めて低い動物です。100メートル6秒で走ることが出来る反面、長時間の運動が出来ないので長時間追いかけて捕食できないとあきらめます。
アフリカで足の速い草食動物が生き延びているのは、ライオンから逃げ切ることが可能だからです。
ライオンの目から見た人間は、数が多く遭遇しやすく、足が遅く狩りやすい、毛皮が無く柔らかくて食べやすい、腹を満たすのに適度な分量と大きさで餌として極めて好都合な生物です。ライオンは舌が馬鹿で、肉の塊なら不味くても食べるので、人肉が不味くても気にしません。
有名な『ツァボの人食いライオン』の被害者数は公式には28人、最大で135人まで諸説ありはっきりしていませんが、記録が確かな個体としては20カ月の間に35人を食べて、2004年4月に射殺された人食いライオンがいます。
このライオンの死体を調べたところ歯が悪いことがわかりました。おそらく水牛などの硬い肉を噛むのが苦痛だったので、捕まえやすくて食べるのに苦痛が少ない人間を食べるようになったと推測されています。
もしかしたらライオンから見た人間は、歯が悪くて体が弱っていても食べやすい病人食や老人食の可能性すらあります。
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