「魔女狩り」の発端となった女、アーミン・デ・ライムズとは!? 空中浮揚、悪魔が性交… 知られざる実像
中世ヨーロッパの“黒歴史”である「魔女狩り」と「魔女裁判」にはどのような背景があったのか。そこには農民出身の一人の女性の存在が大きく影響を及ぼしたという。彼女は、神と悪魔の両方に憑りつかれて“ビジョン”を見ていたというのである。
■アーミン・デ・ライムズの“ビジョン”とは
1384年、アーミン・デ・ライムズという貧しく読み書きができない農民の女性が、年配の夫と一緒に仏シャンパーニュ地方の街、ランスに引っ越してきた。
アーミンは敬虔なカトリックの信者であったが、当時はカトリック教会内の内紛に加えて疫病の流行など、社会が大きな変化に揺さぶられていた時代であった。
彼女の年老いた夫はすでに晩年を迎えており、その後間もなく亡くなった。この夫の死による影響があったのかどうかはわからないが、この後アーミンの人生は奇妙な方向へと向かい、夜に訪れてくる神と悪魔のビジョンを体験するようになったのだ。そして、これらの特殊な体験をアウグスティヌス修道院の修道士、ジャン・ル・グラヴールに逐一報告し、グラヴールはそれを詳細に書き留めたのだった。
グラヴールの記録によると、アーミン・デ・ライムズの異変は1395年11月24日に始まり、それらは大まかにビジョンと呼ばれる幻視体験であったが、単純な幻視よりもはるかに物理的な体験であり、聴覚、匂い、触覚、さらには実際に悪魔を“舐めた”時の味覚さえ含まれている。
彼女の体験は、悪魔との出会いのあらゆる特徴を有し、魅力的であると同時に恐ろしい欲望も表していた。そして、人間の姿になった悪魔に誘惑されることも少なくなかった。
たとえば、ある夜には寝室に美しい男女が現れて床の上でセックスを繰り広げ、その後に男が肉欲を満たすことのできないアーミンを宗教的堕落へと誘おうとしたという。
また、ある時は中世の悪魔を象徴する野生生物たちに襲われた。何日も彼女の身体を這い回る小さなハエから、ヒキガエル、イタチ、真っ赤な目を持つ家猫、彼女の頭の周りを飛び回る7匹のコウモリ、寝室の窓辺にいる巨大な犬、巨大な蛇、そしてクマまで登場するのだった。
さらに、魔女がほうきに跨って飛び回るという描写に代表されるように、空中移動も中世の悪魔の活動の一般的な特徴であるが、アーミンも何度となく悪魔によって空中を移動させられた。
ある事件では、彼女は修道院の中庭まで悪魔に運ばれて宙を浮遊し、教会の前に捨て置かれた。また別の事件では、教会の塔の上まで運ばれて取り残され、彼女は屋根に取り付けられた石の十字架にしがみつくしかなかったのだった。
アーミンの最もトラウマ的な旅は、ナントゥイユの森に運ばれた時であった。通りで黒い馬に乗った3人の男に誘拐されて森に運ばれた後、彼女は黒い服を着た大勢の悪魔たちの真っ只中に置かれ、危機一髪のところで出現した聖パウロに助けられて無事に家に戻ることができたのだった。
一方で、天使やさまざまな聖人たちの来訪による神聖な体験もあったのだが、来訪者の一部は彼女を欺くために天使の姿を装った悪魔であることが明らかになった。しかし、アーミンは常に欺瞞を明らかにし、偽装を暴くことができた。この能力こそが、アーミンが単なるビジョナリーを越えた存在たらしめたのである。
■憑依の識別能力が注目される
神と悪魔を区別する能力は、憑依の識別能力として当時の神学者たちの間で知られていた。アーミン・デ・ライムズの神と悪魔を区別する能力は、悪魔から守る方法を人々に教えるものとしても期待された。
中世では、霊は非物質的な魂と物質的な身体の間の仲介者として働き、神だけが人間の精神を超自然的なものに置き換える能力を持つと考えられていた。悪魔は非物質的な魂を所有することはできないのだが、肉体と魂の間の媒介をすることができ、魂を混乱させたり誘惑したりする場合もあった。しかし、アーミンが悪魔に憑かれた場合、それはビジョンに現れるため識別可能であったのだ。
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2024.10.02 20:00心霊「魔女狩り」の発端となった女、アーミン・デ・ライムズとは!? 空中浮揚、悪魔が性交… 知られざる実像のページです。魔女、悪魔、キリスト教、カトリック、憑依、ビジョン、アーミン・デ・ライムズなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで