妊娠するラブドールに死体絵画… 芸術家が集まる別府の特異性とは? 驚異の陳列室「書肆ゲンシシャ」が所蔵する奇妙な本
藤井:あと、ジェンダーの観点からすると、岡部桃さんという「非性愛者・アセクシュアル」を自認する写真家の活動も興味深いですね。この方は非性愛者同士で結婚し、人工授精で妊娠・出産しています。
――同性の恋人が性転換手術を受ける過程や、震災の被災跡を写した『BIBLE』という写真集で注目されましたね。
藤井:『BIBLE』は相当プレミアがついていて、今は3〜4万円はします。また、2020年にまんだらけから出版された女性器を連想させる表紙の写真集『イルマタル』(まんだらけ)も、プリント付きの限定版は5万円で販売されています。
――まんだらけがこうしたアート写真集を出すのも珍しい気がしますね。
藤井:今度は海外に目を向けて、ジェニー・サヴィルというイギリスの人気画家も紹介しましょう。彼女はグロテスクなものを絵の題材にしていて、火傷を負っていたり、奇形であったりする女性のヌードを描いています。画集『Jenny Saville』(Rizzoli)の表紙に描かれた女性の絵は自画像です。同書には彼女の絵とその発想の源となった写真の両方が収録されています。
――奇形児や事件現場のような写真が元になっている絵もあるんですね。それに、90年代に活躍したイギリスのロックバンド、マニック・ストリート・プリーチャーズの『ジャーナル・フォー・プレイグ・ラヴァーズ』のジャケットもこの人なんですね。
藤井:当時の音楽シーンも彼女の作品に目をつけるほど人気があったということですが、彼女は大学で女性学を学んでいたらしく、そこからこうした表現に行き着くのも興味深いですよね。実物の絵のサイズはかなり大きいため、いつかは実物を見てみたいものです。日本で個展を開いてもらえないですかね。
――「美術手帖」の記事によると、2018年に彼女の《Propped》は950万ポンド(約14億円)と、「現存女性アーティストの過去最高額」で落札されたらしいですよ。
藤井:それぐらいの価値はあるでしょうね。金額という視点でいうと、ニコラ・サモリというイタリア人の画家はまだ40代ですが、1枚400万〜700万円ぐらいで作品が取引されていて、うちでも彼の作品は人気があります。バロック絵画から影響を受けていて、古風な絵を現代風にアレンジしています。自分で絵を描いた後、キャンバスを引き裂いて、それを作品にしています。
――なかなかお目にかかることのできない海外の高額な作品も、画集であれば見ることができるのでありがたいですね。ネットで見るよりも、なんというか、ありがたみが増す気がします。
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2024.10.02 20:00心霊妊娠するラブドールに死体絵画… 芸術家が集まる別府の特異性とは? 驚異の陳列室「書肆ゲンシシャ」が所蔵する奇妙な本のページです。アート、大分県、会田誠、書肆ゲンシシャ、別府、アニッシュ・カプーア、リボーンドールなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで