赤ちゃんは言語より先にロジックを習得していた! “自分だけの言葉”で自分と会話
われわれは1歳を過ぎたあたりから、徐々に言葉を話せるようになるといわれている。では、生まれたばかりの赤ちゃんは世界をどのように捉えているのだろうか? そんな素朴な疑問に対する有力な研究結果が報告されている。
2018年3月、科学誌「Science」にて発表された論文によると、144名の赤ちゃんを対象に理論的思考能力を探る実験を行ったところ、言語を習得していない乳幼児にもロジックを理解する能力が備わっていることが明らかになったという。一説には、母国語を習得する前の乳幼児は、独自の言葉で自己の内面と会話している可能性が指摘されている。時には自身の「言葉にならない心の声」と向き合うことで、新たな気づきを得ることができるかもしれない。
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※ こちらの記事は2018年6月4日の記事を再掲しています。
論理的な思考をするうえで欠かせないのが言語と数字だ。われわれは言語を習得することによってロジカルな思考が可能となるのか? あるいは逆に論理を先に理解しているからこそ、言葉を巧みに操ることができるようになるのか? 論理的思考における“ニワトリor卵”問題に最新の研究が切り込んでいる。
アニメを見る赤ちゃんの視線を観察
赤ちゃんは1歳を過ぎたあたりから、ある程度意味のある言葉を話すようになるといわれている。では、言葉を話す前の赤ちゃんは物事をどう捉えているのだろうか。
この3月に科学誌「Science」に興味深い研究論文が掲載されている。スペイン、ハンガリー、ポーランドの合同研究チームが、生後12カ月と生後19カ月の赤ちゃんを対象にして、乳幼児の論理的思考能力を探る実験を行ったのだ。
集められた赤ちゃんは144人。全員まだ意味のある言葉を使うことができていない赤ちゃんで、半数は生後12カ月、もう半数は生後19カ月だ。実験では赤ちゃんに、あるアニメ映像を見せ、研究チームはその視線の動きを詳しく観察した。実験中の赤ちゃんは母親の腿の上に置かれていたのだが、なるべく環境の影響を受けないように母親にはアイマスクが着けられた。
アニメの内容はシンプルではあるが目を引くものである。ヘビとボール(12カ月児向け)、恐竜と花(19カ月児向け)という画像がペアで登場するのだが、いずれも画像の上部の形状と色が同じになっているのだ。
このペアの画像がいったんバリアで隠されることになる。そして、2つのうちの1つがカップですくい上げられてバリアの右側に置かれる。カップは口が開いているので、画像の上部の部分が見えている。しかし、上部の形状はどちらも同じであるため、この時点ではどちらなのかはわからない。
そして、音楽に合わせてバリアが取り去られる。現れたのは恐竜だ。したがってカップに入ってるほうは花ということになる。恐竜が歩き出して画面からいなくなったところで、続いて曲に合わせてカップも取り去られ、案の定、花が姿を現すのだ。つまり赤ちゃんがもし論理的思考ができるのであれば、恐竜が姿を見せた時点で、もう一方が花であることがわかることになる。
しかし、このアニメには別のバーションも用意されて赤ちゃんに見せられた。別バージョンの内容は、バリアが取り去られて恐竜が現れたのに、カップの中にも恐竜がいたという“あり得ない”内容である。はたして赤ちゃんはこの2つのアニメをどのように見ていたのだろうか。
言葉を話せない赤ちゃんにも論理的思考能力がある
研究を主導した西ポンペウ・ファブラ大学のニコロ・チェザーナ・アーロッティ氏によれば、子どもは予期せぬ事態を目の当たりにすると、その光景を長く見つめる性質があるということだ。期待を裏切られたことで「信じられない!」気持ちになって、何度も確かめたくなるのはわれわれ大人にも当てはまるだろう。
したがって、2つのアニメを見た赤ちゃんが最後に明らかなった花と恐竜のどちらを長く見つめていたのかがわかれば、赤ちゃんに論理的思考能力があるかどうかが判明することになる。
収集したデータを分析した結果、赤ちゃんは花よりも恐竜を長く見つめていることが明らかになった。生後12カ月、19カ月のいずれの赤ちゃんにおいても予想を裏切る結果となるほうの画像に「信じられない!」とばかりに視線が釘づけになっていたのだ。そしてこの結果は、赤ちゃんに論理的思考能力が備わっていることを示唆するものになる。
赤ちゃんにも論理的思考能力があるという今回の研究結果は多くの注目を浴びているようだ。アメリカ、ノースウェスタン大学のスーザン・ホープ氏が支持している一方で、同カリフォルニア大学デービス校のリサ・オークス氏は、赤ちゃんは驚いたのではなく、単にもう一方の画像が登場しないから長く見ていただけである可能性を指摘している。
また、認知発達心理学の専門家であるアリソン・ゴプニク氏は、母国語を習得する前の乳幼児は独自の内面的な言葉で自分と会話している可能性を指摘している。その独自の“言語”は話せるようになってからは徐々に忘れ去られていくのだが、例えば大人でも考えごとの最中に頭を掻いたりアゴを撫でたりしているときには、言葉を使った推論とは別の思考法を採用している可能性があるかもしれないのだ。とすれば、時にはこうした「言葉にならない心の声」に耳を傾けてみれば思わぬ発見があるのかもしれない。
参考:「Big Think」、ほか
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