性器図鑑、変態性欲ノ心理、100年前のスパンキング写真集… 驚異の陳列室「書肆ゲンシシャ」が所蔵する奇妙な本

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「書肆ゲンシシャ」内観

「驚異の陳列室」を標榜し、写真集、画集や書籍をはじめ、5000点以上に及ぶ奇妙な骨董品を所蔵する大分県・別府の古書店「書肆ゲンシシャ」。

 SNS投稿などでそのコレクションが話題となり、九州のみならず全国からサブカルキッズたちが訪れるようになった同店。今では少子高齢化にあえぐ地方都市とは思えぬほど多くの人が集まる、別府の新たな観光名所になっているという。

 本連載では、そんな「書肆ゲンシシャ」店主の藤井慎二氏に、同店の所蔵する珍奇で奇妙な本の数々を紹介してもらう。

ゲンシシャもイチオシ!? 別府のオシャレスポット

――前回は見世物というテーマで関連書籍を紹介してもらいましたが、昔は別府にも見世物小屋はあったんですよね?

藤井慎二(以下、藤井):はい。私は行ったことありませんが、別府の公園でも見世物が披露されていたようです。博多の三大祭のひとつ「放生会」で「見世物小屋を見た」という人もいました。

――もはや、昔話になりつつもありますが、かつては日本全国を巡業していたのでしょうね。

藤井:野蛮な話ですが、戦時中の日本では中国大陸から奇形の人々を連れて来て、展示していたこともあるようです。そのような歴史もありますが、最近はある意味「レトロブーム」のように、見世物小屋を見たことのない若者たちが、フリークスや見世物小屋に関する書籍に興味を持っているようです。

――果たして見世物小屋も純喫茶プリンやシティポップと、一緒くたにしてもいいのでしょうか……。一方で、レトロブームで人気を博している丸尾末広のマンガ、『少女椿』も見世物小屋が舞台ですよね。

藤井:そもそも、丸尾末広のルーツを辿ると、大正時代の画家・高畠華宵(たかばたけ・かしょう)に行き着きます。

――そんな、レトロブームの恩恵を、別府の温泉街も受けていると思いますが、最近、別府で若者に人気のスポットなどはありますか?

藤井:ゲンシシャの隣には別府公園があり、その公園内にあるスターバックスは、APU(立命館アジア太平洋大学)の学生たちが集まる盛り場になっています。このスタバは広くて、大きなガラス窓から見える夕日がキレイなんですよね。たぶん、別府で今、一番のオシャレスポットといえるでしょう。

――まさかのスタバ(笑)。でも、別府にスタバは2店舗しかないから、トレンドに敏感な若者たちにしてみれば、非常に大事なスポットなのでしょうね。

藤井:今度3店舗目もできる予定です。新型コロナウイルス感染症が流行して以降、別府にオシャレなお店が増えてきた気がします。というのも、APUには「起業部」があって、学生の起業を支援しています。在学生や卒業生たちが始めたカフェや飲食店は、若者を中心に人気があります。さらに、別府は今“カレーの街”というPR活動もしており、カレーが大流行しています。あまりの人気で、居酒屋や花屋までカレーを作り始めたぐらいです。

――温泉街の名物にスタバとカレーが追加されたのですね。

「アンタッチャブル・ヴァギナ」とは一体……?

――今回紹介していただく本のテーマは「性」なのですが、いくらTOCANAとはいえ、レギュレーションはあるので、なるべく掲載可能な書籍の紹介をお願いします(笑)。

藤井:それでは、2020年にTOCANAの姉妹メディアである「月刊サイゾー」でも紹介した、『Le pénis Atlas』というフランスの男性器図鑑から紹介しましょう。同書は、さまざまな男性のペニスを、あらゆる角度から撮影し、100枚近く収めた、まるで「ペニスの百科事典」です。界隈では非常に人気がある本で、「プレミア価格で手を出せなかった」と、お客さんからはよくいわれます。

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『Le pénis Atlas』(LE CONTREPOINT)

――「界隈」とは、こうした珍しい写真集を目当てに、来店されるお客さんのことを指すのだと思いますが、一応補足すると、これは医学書なんですよね?

藤井:ノルウェーの性科学者らが作成したものです。ペニスの太さや勃起時の角度など、さまざまな分析がされているため、図鑑として楽しめます。裏表紙がお尻になっていたり、パンツの表紙をめくるとペニスが現れたり、なかなか凝った装丁です。さらに、同書には大量のペニスが描かれたポスターが付録で付いているのですが、これがまたフランスっぽいオシャレなセンスを感じさせます。

――デザインというのは大切ですね……。以前、「サイゾー」で取り上げたときの価格は9000円程度でしたが、改めてAmazonで調べたところ今はハードカバーが240ドルするようなので、相当値上がりしているようです。

藤井:同書と対になる写真集として『101 Vagina』を紹介しましょう。ヴァギナといっても“もろヴァギナ”ではなく、正面から101人の女性の下半身を捉えた写真集です。

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101 Vagina

――それはそれでフェチっぽいですけどね。同書には必ずしも若くてスタイルのいいモデルばかりではなく、年齢も体重もさまざまな女性のヴァギナが載っているんですね。

藤井:毛が生えてなかったり、タトゥーがあったり……。写真の隣のページにモデルの女性にまつわる文章も書かれているため、ヴァギナを見ながら被写体に思いを馳せられます。こちらも入手困難な一冊です。

――オーストラリアの自費出版本のようですが、モデルにまつわる文章はどのようなことが書かれているのでしょうか?

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『Cent photographies choisies dans la série Deux mille photographies du sexe d’une femme』(Borderie)

藤井:その女性とヴァギナに関するエピソードですね。たとえば「子どもの頃、カトリックの母親からヴァギナに触れることを許されなかった」女性には、 “ The untouchable vagina”という見出しがつけられています。

――直訳すると「触れられざる女性器」という……。当たり前ですが、「エロ目的」というより、「性に関する価値観」を学ぶ側面が強いですね。

藤井:ヴァギナに関しては『Cent photographies choisies dans la série Deux mille photographies du sexe d’une femme』もオススメですね。フランスの写真家であるアンリ・マッケローニが、あるひとりの女性のヴァギナを2000枚撮影し、その中から100枚を厳選した写真集です。最近お買い上げいただいたので、今はお店にありませんが、近々再入荷予定です。

 

――いまさらですが、ゲンシシャは古書店でもあるので、コレクションは購入することができるんですよね。

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