リアル「エスター」事件続報! 養子に迎えた8歳の少女は22歳のサイコパスだった… 新ドキュメンタリーで被害者家族が激白

 ウクライナの孤児院から6歳の少女を養子に迎え入れた夫妻を襲った悲劇とは――。錯綜する“リアルエスター事件”に新たな展開が見えている。

“リアルエスター事件”とは

 2009年のホラー映画『エスター』は養子として迎えた少女が実は発育不全の成人女性であり、里親家族を破滅に導く恐怖のモンスターとして暗躍する筋書きだが、驚くべきことに現実の世界でも“リアルエスター事件”が起こっていた。

 トカナでもこれまで何度がお伝えしてきた“リアルエスター事件”の概要をここでもう一度おさらいしてみよう。

 米インディアナ州在住の夫妻、夫のマイケルと妻のクリスティンのバーネット夫妻(2014年に離婚)は2010年4月26日にナタリア・グレイスを養子にした。

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ナタリア・グレイス 「Daily Mail」の記事より

 ウクライナの孤児院にいたナタリアは迎え入れた時点で6歳といわれていたが、小人症の症状があり身長は90センチほどで歩行に障害があった。

 夫妻はナタリアを大いに可愛がって育てたが、2年ほど育児をしてみてナタリアに妙に大人びたところがあることに気づくことになる。そこでかかりつけ医にナタリアの骨密度の検査をしてもらったところ、この時点で8歳のはずのナタリアが少なくとも14歳以上であると診断されたのだ。

 そしてこの頃からナタリアの家庭内での問題行動が目立つようになる。夫人のコーヒーに漂白剤を入れたり、バスルームに自分の血で「殺す」と書いたり、夫人を害獣対策用の庭の電気柵に押し付けようとしたりと、家族を危険な目に遭わせるようになったのだ。

 凶暴化するナタリアに手が負えなくなった夫妻は、ナタリアが子供ではないとすれば欺かれたのは自分たちのほうであり、養育の義務はなくなると考え、裁判所にナタリアの年齢の修正を申請した。そして2012年にナタリアが1989年9月4日生まれの22歳の成年女性であることが認められたのだ。

 その後、夫妻はナタリアにアパートをあてがって別居することを決め、実の子供たちとカナダへ移住したのである。

 しかしここから話はむしろこじれることになる。年齢詐称によって養育の義務はなくなったかもしれないが、足が悪いことは知っていて養子にしたのだからは夫妻にはナタリアの扶養義務があるとして、カナダに移住した後の2019年に元夫妻のマイケルとクリスティンは育児放棄の罪で起訴されたのだ。

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クリスティン(左)、マイケル(右) 「Daily Mail」の記事より

元夫「彼女は私の妻を毒殺しようとした」

 夫妻一家の移住によってインディアナ州レイフェットに残されたナタリアは1人暮らしを余儀なくされ、2014年に警察に対して里親が自分を置き去りにしてカナダへ移住してしまったと訴えたのである。

 その後の2016年にナタリアは複数の養子を持つマンズ夫妻に引き取られ、そこで事実上の家族の一員として暮らしているということだ。

 マイケルとクリスティンへの起訴はその後に取り下げられ、法的には一応の結着を迎えることになった。

 しかしマイケル・バーネットは“子供のふりをしたサイコパス”であるナタリアと過ごしたあの悪夢の2年間を決して水に流すことはできないと憤っている。

 3部構成で公開される新たなドキュメンタリー『The Curious Case of Natalia Grace(ナタリア・グレース数奇な事件)』の中で、マイケルは家族が「虐待」され、ナタリアが家族を脅迫して殺そうとしたのだと激しく訴えた。

「私たちは皆、虐待を受けていました。とても嫌なことでした」とマイケルは叫ぶ。そして「彼女は私の(元)妻を毒殺しようとした」とマイケルは主張したのだ。

「ある夜、目を開けると、ナタリアがナイフを手にベッドの足元に立っていました」(マイケル)

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「Daily Mail」の記事より

 クリスティンもまた当時の暮らしを涙ながらに振り返る。

「彼女が私のコーヒーに化学物質、漂白剤、洗剤のようなものを入れているのを見て、私は彼女に尋ねました。『何をしているのですか?』と。彼女は『あなたに毒を盛ろうとしているのです』と言いました」(クリスティン)

 そして自分たちは決してナタリアに対してネグレクトしたわけではないと説明する。

「メディアは私たちを児童虐待者であるかのように描いていますが、ここには子供はいないのです」(クリスティン)

 ナタリアを診断した複数の医師は全員、彼女が成人のみに診断される重度の精神疾患を患っていることを確認したといわれている。

 番組は米テレビ放送・ディスカバリーチャンネルの新ブランドである「ID(Investigation Discovery)」で放送され、シリーズの初回放送は5月29日ということでその内容も気になるところだ。ともあれこの“リアルエスター事件”は現在も進行中の案件であるだけに今後も予断を許さないだろう。

参考:「Daily Mail」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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