AIで生まれ変わった死者がネット上で遺族を苦しめる!? 「ゴーストボット」に専門家が警鐘
近年、人工知能(AI)の急速な進歩により、イラストや音楽、文章などさまざまなものを簡単に産み出すことが可能になったが、これによりディープフェイク(生成された高度なフェイク動画)などの蔓延も危惧されている。
中でも海外を中心に警戒されているのが、AI技術により死者をデジタル化して蘇らせ、詐欺を働くという「ゴーストボット」の台頭だ。
「ゴーストボット」は、ソーシャルメディアからデータを使って死者の声、顔、性格まで正確に再現し、リアルタイムのチャットすら可能にするボット。専門家らは、「ゴーストボット」が物理的な危害を加えることはないものの、遺族に精神的苦痛や経済的損害を与える可能性があると述べている。
カニエ・ウェストは2020年に元妻キム・カーダシアンに亡き父ロバート・カーダシアンをAIで再現したホログラムを送ったという。これは再現度も高く、会話も可能だったが、この技術を悪用する人が現れる可能性が懸念されている。
北アイルランド・クイーンズ大学ベルファストのMarisa McVey博士は、次のように語る。
「ゴーストボットはプライバシーや財産など、さまざまな法律の領域と交差していますが、死後の故人の人格、プライバシー、尊厳に対する保護は、まだどの国でも法整備が不十分です。私たちの住む英国ではプライバシーやデータ保護に関する法律が死後の相続人にまで及んでいないため、死後に誰がデジタルペルソナを復活させる力を持つかも不明です」
しかし、「ゴーストボット」に対する社会の認識が高まり、遺言書やその他の契約書に「DO NOT BOT ME(botとして利用しない)」条項を設けることで、人々が勝手にデジタルで生まれ変わることを防ぐことができると、クイーンズ大学ベルファスト校アストン大学法学部とニューカッスル大学法学部の「Governing Ghostbots」と題した研究結果が発表されている。
McVey博士は、法律が制定されることに加えて「ゴーストボット」という現象に対する理解が深まれば、人々が自分のデータを保護するのに役立つだろうと述べる。それに加えて、「ゴーストボット」という現象に対する社会的な認識の向上、デジタルレガシーに関する教育、異なる管轄区域をまたぐまとまった保護が、許可なくデータを濫用されないために重要である、とも語っている。
AI技術やSNS関連の犯罪は現在増えつつあるが、死後にデータが悪用される可能性も考えなくてはならない時期に来ているのだ。
参考:「Daily Star」ほか
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