明治時代の消防士が目撃した「火鳥」とは? 延焼予測に活用、実在か伝説か

 人間以外にも火を扱う動物は確認されている。たとえばオーストラリアで長年伝説とみなされていた「放火鳥」は、研究者らによって事実として確認された。一方、日本では明治頃まで「火鳥」とよばれる怪鳥の存在が指摘されていた。

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オーストラリアの放火鳥(トビ)(画像は「Penn State Altoona」より)

――火にまつわる怪異ですか?

神ノ國ヲ:まさしく「怪異」というべき存在ですね。順を追って、科学的に考察していきましょう。たとえば、昨年令和4年の総出火件数は36,375件でした(総務省記録)。だいたい1日100件、14分に1件の火災が発生しています。原因は、タバコの不始末、たき火が最も多く、建物での火災が約2万件、林野を燃やしたものが約1,200件、車両火災が3,400件ほどになっています。船は100件もなく、飛行機にいたってはたった2件、その他の火災が1.1万件ほど発生しました。死者は1,500名近く、負傷者が5,700名ほどです。

――まさか、すべての火事において怪異が?

神ノ國ヲ:科学的に考えれば、その可能性があるんです。まずは火事の現場に現れる謎の「火鳥」とは何なのか。記録をみてみましょう。日本初のオカルトライターと呼ばれる岡田建文によれば、明治初年の1868年、山田乙之丞(やまだ・おとのじょう)という男が富山のあたりから東京へ出てきた。彼はもともと剣士だったが、もはや剣客では食えないというので、仕方なしに消防士になった。そして、なんとも奇妙な異能を発揮して、火の神に守られた男として有名になった。

 どうやらこの山田という男、大火事の際、なぜか風が吹いて次に延焼する場所がわかったらしいんです。誰もが、こちら側は安全だろうと思っている場所に、山田は部下を配置する。本来は消火作業へ行くべき消防隊をひとつ待機させるんです。ところが、山田が予言したように、突然風向きが変わり、待機していた部隊の目前で延焼が始まる。しかし最初から消防隊がいるので、すぐに消し止められて事なきを得る。そういったことが何度も続いたので、まるで火の神に守られた英雄のように扱われたそうです。

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画像は「Getty Images」より

――超能力者ですか?

神ノ國ヲ:ところが山田本人にいわせると「山ガラスの一種、火鳥(ひどり)が、必ず大火のときには現れるから、それを見つけて、その鳥が火焔の中を飛び回り、新たに向かう先が延焼するから、まず火鳥をみつけなくてはならない」。超能力ではなくて、何かしらの鳥が大火の際に現れて、延焼を先回りしていると言うんです。オーストラリアの放火鳥ファイア・ホークの話は近年すっかり有名になりましたが、もしかすると明治時代くらいまでは、それに似た炎を恐れない鳥類がいたのかもしれません。

――つまり「火鳥」は実在したと?

神ノ國ヲ:少なくともカラスの一種だったわけですから、30~60㎝くらいはある大きな鳥ですよね。ただ山田以外で、火鳥を発見できる者は多くなかったようです。山田によれば、この火鳥は、徳川時代の富山は加賀藩の悲劇・大槻伝蔵(おおつき・でんぞう)が、のちに白山神の使いとなったもの、それが火鳥であるそうです。

 たしかに大槻伝蔵は足軽の子の身分から加賀百万石の藩内政治に躍り出た実力者であり、途中で火消し役もこなしています。しかし結果的に周囲の嫉妬を買って、伝蔵は、藩主毒殺/不倫の濡れ衣を着せられて、追放された富山の白山にて自刃となります。消防士の山田によれば、そんな伝蔵の無念と忠義を不憫に思われた神様が彼を使いとして召し出した。それが「火鳥」です。

――白山といえば、日本三大霊山の?

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白山(画像は「Wikipedia」より)

神ノ國ヲ:そうです。現在の石川、福井、岐阜、富山にわたる北陸の霊山です。富士山、立山とともに日本三霊山の一つが白山だといわれています。つまり、もしかすると江戸時代や明治の初めごろまでは、北陸地方の山間部に「火鳥」と呼ばれる、未確認の鳥類がいたのかもしれません。それが伝蔵の伝説と融合し伝えられていた。もちろん元剣客・山田の動体視力でしか追えないほど速く飛ぶ鳥ですから、なかなか人目にはつかなかったのでしょう。しかし、それらが明治初年ごろまでは、どういうわけか東京でも目撃された。少なくとも山田は故郷に伝わる火鳥が東京にもいたと思って、消防士として大いに活躍した。これは事実です。

 まだまだ未知の生物や発見されていない動植物は多いのかもしれません。もし火事の最中に、あなたの方に向かって飛んでくる鳥を見たら注意してくださいね。次に燃える場所が近いはずですから。

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文=神ノ國ヲ

学術論文からオカルト記事まで。
京都大学の博士課程に所属中。
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