人間はどこまで残虐になれるのか !?ユダヤ、1ドル、浮気… 人間の超意外な本性がわかった「偉大な心理学的発見」トップ10!

 人間の心を科学する「心理学」。専門家ではなくても、奇抜な心理学的実験や意外な心理学的事実に興味を持つ人は多いだろう。この度、心理学サイト「Psychology Today」が、最も“クール”な心理学的発見10を紹介している。

Florin RaduによるPixabayからの画像


10. 人間の感情表現は文化を問わず一貫性がある

人間の感情表現に関する歴史的な研究は、1986年に心理学者エクマンとフリーセンによって行われた。2人は、南太平洋の遊牧民からマンハッタンの小洒落たアメリカ人まで、喜び、悲しみ、怒り、驚き、嫌悪、恐れといった基本的な表情の表現を調べたところ、どの地域でも驚くほど類似した表現を用いることを発見した。


9. 人間は驚くほど他の動物に似ている

 1953年、行動主義心理学者のバラス・スキナーは、人間の行動における最も重要な研究を行った。スキナーは、人間も他の動物も学習形態においては、報酬や罰に適応して、自発的にある行動を行うように学習することである「オペラント条件づけ」や、刺激に応答する「古典的条件づけ」に従っていることを発見した。

8. 1ドルの報酬実験

 レオン・フェスティンガーとカール・スミスは1959年に認知的不協和(人が自身の中で矛盾する認知を同時に抱えた状態)に関する驚くべき実験を行った。

 それは、学生らに糸巻き器を容器に並べて取り出したり、留め金のついたボードを回して元に戻すという極めてつまらなく退屈な作業を30分間させ、次に作業を行う学生に「面白い作業だった」と伝えた後、あらためて実験担当者から作業が面白かったかどうか尋ねられるというもの。

 実験のポイントは、2つの学生のグループに異なる報酬(1ドルと20ドル)を与えた点だ。実験の結果、1ドルを受け取った学生は実験担当者に「面白かった」という確率が、20ドルを受け取った学生らに比べて高かったという。

 これは、20ドルを受け取った学生は、つまらない作業に対する十分な報酬を受け取ったため認知的不協和が解消されたが、1ドルを受け取った学生はつまらない作業であったにもかかわらず、安い報酬しかもらえず、次の学生に「面白い」という評価を伝えたことで不協和を抱えたままになっている。そのため、「実は面白いところもあった」と認知を変えることで不協和を解消しようとしたわけだ。

7. ミルグラム実験

 強大な権威の下では善良な人間も残酷になることを証明したミルグラムの実験。1963年、米イェール大学の心理学者スタンリー・ミルグラムが行った有名な心理学実験である。被験者は生徒と教師に分けられ、教師役は権威者の命令によって生徒役に電気ショックの罰を与える。ミルグラムは、電気ショックの電圧を上げろという指示にどれだけの被験者が従うかを調べたのだ。恐るべきことに、被験者のおよそ65%が命令に従って電圧を最後まで上げた。悲鳴をあげて苦悶にあえぐ生徒役(実は役者だが当然教師役の被験者には伏せられている)の懇願にもかかわらず、である。

 この実験は、平凡な役人だったアドルフ・アイヒマンがユダヤ人を絶滅収容所に輸送する責任者として、多くのユダヤ人の命を奪うことに貢献したように、普段は悪とは無縁の普通の人であっても権威者の命令によって簡単に残虐行為に加担することを証明した。


6. 成功においてEI(心の知能指数)はIQよりも重要である

 80年代後半にEIの研究を始めたピーター・サロベイとジョン・D・メイヤーは、1997年にビジネス社会における成功の要因を心理学的に研究した。一般的に、学歴が高く、IQの高い有能な人はビジネスでも成功すると考えられがちであるが、現実にはIQが高くても成功できない人も多い。そこで両氏はビジネスで成功した人物を対象に広く調査を行ったところ、彼らはほぼ例外なくEIに優れており、対人関係を円滑にすすめる能力に長けていることが分かった。

5. 米国における殺人事件の3分の1は夫婦の浮気が引き起こしている

 進化論的な観点にたてば、生殖による自身の遺伝子の複製を行う上でも、共通の利益を追求する上でも近親者の存在は重要である。しかし、1982年のマーティン・ダーリーとマーゴ・ウィルソンの研究によると、全米における殺人事件のうち、およそ3分の1が夫婦の不倫による殺人だと分かったのだ。

4. 人は良い香りがする部屋にいるほうが寛大になる

 ケイティー・リジェンキストらによる2010年の研究によると、人は良い香りがする部屋にいるほうが寛大になり、ボランティアに積極的になることが判明した。研究者らは、ガラス掃除用クリーナーWindexをスプレーした部屋と、普通の匂いの部屋を用意。被験者らが、どちらの部屋にいる時に、よりボランティアに積極的になるか実験したところ、清潔な良い香りのする部屋に入った被験者の方が寄付をする傾向が強いことが分かったという。

3. 自分の行動はそれほど正確に把握できていない

 1977年のリチャード・ニスベットとティモシー・ウィルソンの研究は、人々は自分の行動の原因に全く気付いていないことを示したことで有名だ。たとえば、被験者に映画を観てもらい、その映画の感想を尋ねた簡単な実験では、映画鑑賞中に定期的な大音量のノイズを聞いた被験者は、そうでない被験者に対し、映画に対する評価が低かったという。そして、低い評価を下した被験者は、その理由について誰一人としてノイズに言及しなかったのだ。

2. 性格は行動に影響しない

 一般的に、性格(パーソナリティ)は人々の行動の大きな要因を占めていると考えられているが、これに敢然と批判を加えたのが、スタンフォード大学の心理学者ウォルター・ミシェルである。1968年のミッシェルの研究によれば、性格が行動に与える影響は最大でも9%ほどで、多くは環境が行動を決定するという。

1. 善きサマリア人の実験

 プリンストン大学の心理学者、ジョン・ダーリーとダニエル・バトソンが行った「善きサマリア人の実験」が栄えある1位に輝いた。この実験は、その名の通り新約聖書の「善きサマリア人のたとえ」(下記)に依拠したものだ。

「イエスが答えて言われた、ある人がエルサレムからエリコに下って行く途中、強盗どもが彼を襲い、その着物をはぎ取り、傷を負わせ、半殺しにしたまま、逃げ去った。するとたまたま、ひとりの祭司がその道を下ってきたが、この人を見ると、向こう側を通って行った。同様に、レビ人もこの場所にさしかかってきたが、彼を見ると向こう側を通って行った。ところが、あるサマリヤ人が旅をしてこの人のところを通りかかり、彼を見て気の毒に思い、近寄ってきてその傷にオリブ油とぶどう酒とを注いでほうたいをしてやり、自分の家畜に乗せ、宿屋に連れて行って介抱した」(ルカによる福音書)

「善きサマリア人の実験」では、ある神学生らには「善きサマリア人のたとえ」を、別の神学生らには他のエピソードを近くのビルでレクチャーするよう依頼。その道すがら、行き倒れている人がいるが、果たしてどちらの学生が立ち止まってその人を助ける確率が高いか、というもの。

その結果、どちらの学生も助ける確率に差はないことが分かった。むしろ、人助けに寄与したのは時間だった。急いでビルに向かった学生は10%、余裕を持ってビルに向かった学生は63%の確率で倒れている人を助けたという。人の行動は信念や思想よりも、その時の状況が大きな影響を持つのである。

 如何だろうか? これだけ多くの成果をあげてきた心理学だが、実は学問として確立してまだ130年ほどの歴史しかない若い分野である。今後、ますます人間の本性を暴く恐ろしくも魅力的な発見が飛び出してくることに期待したい。
(編集部)


参考:「Psychology Today」、ほか

 

※当記事は2018年の記事を再掲しています。

TOCANA編集部

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