【闇深】Netflix「三体」の製作裏で実際に起きていた暗殺事件の真相
今年ストリーミング界で最も視聴された作品の一つであるNetflixの大作SFドラマ「三体」は、世界中の著名科学者らが不可解な死を遂げるという設定から始まる。しかし製作の裏側では、実際に富豪の暗殺事件が起きていたのだ。
中国のSF三部作「三体」の映画化権利を所有するゲーム会社游族網絡の創業者、39歳の富豪林祥徳氏が毒殺された。先月、林氏の殺害を企てた同社の重役が死刑判決を受けたのだ。
真犯罪ポッドキャスト「Rotten Mango」のステファニー・スー氏によると、林氏の行動がかつてAmazonとのドラマ化交渉を潰す遠因となったという。
Amazonとの最終会議に、ギャングスタのような出で立ちで現れた林氏は「共同製作にしよう」と発言。数か月に及ぶ交渉を一喝で打ち砕いてしまったのである。
スー氏は「契約にサインするところまで来ていたが、そこで林祥徳CEO(当時)が『共同製作にしよう』と言い放ち、一気に交渉が決裂したのだ」と説明する。
「Amazonチームは上司のベゾスCEOに林氏の発言を報告せざるを得なくなり、良い一日にはならなかっただろう。しかし気分を害したのはAmazonだけではなかった。会議を後にした游族網絡の役員陣も、林氏の突然の提案に激怒した様子だったのだ」
Amazonの関係者は、会議を出た中国側役員の「険悪な雰囲気」を感じ取ったと証言している。それでもその後、游族網絡はAmazonのライバルでもあるNetflixと製作契約を結ぶことに成功した。
16億ドル超の製作費がかけられたこの大作SFドラマ「三体」の発表時、林氏は宣伝活動に携わり、記者会見では「死ぬ間際に後悔することがあるとすれば、『三体』をだめにしたことだろうか」と述べていた。
しかし実際には、Netflixとの契約締結から僅か3か月後の2020年12月25日に、林氏は39歳の若さで毒殺されることになる。かねてからAmazonとの交渉に携わっていた関係者は「林氏が殺されたことに驚きはない」と語る。
プーアル茶が好物だった資産家の林氏は、その高級茶を飲んだ直後に体調を崩し、10日後に死去した。林氏のオフィスで働く4人の従業員も同じ茶を飲み、病院に搬送されたが一命は取り留めた。
Netflixとの契約直後、林氏は弁護士の許曉を降格していた。かつては140億ドル相当の買収案件を統括するスター交渉人だった許は、「三体」シリーズの製作統括を任されていたのである。
しかし林氏は許とうまくいかず、ライバル幹部に「三体」の製作指揮を取らせた。復讐を企てた許は新会社を設立し、「闇サイトから毒物を購入し、日本の持ち株会社に送り届けていた」とスー氏は明かす。
「その毒物は最終的に上海の僻地の小さな倉庫に集められた。多分運び屋たちは毒物だと知らなかっただろう」
検察当局によると、許はその後、動物を使って毒性試験を行い、2020年9月から12月にかけて、会社の同僚数人と、特に嫌っていた林氏に、この自作の化合物を盛っていったという。使用された毒物は、トラフグの持つ神経毒から作られていた。
林氏が死去するとすぐに、許への疑惑の目が向けられた。スー氏は「警察は、林氏らに接する機会があり毒を盛れる人物を特定していった。そうして疑惑の矛先が一人の人間に向かったのだ」と語る。
その数日後、39歳の許は逮捕され、今年3月下旬、許は上海の中級人民法院で死刑判決を受けた。
林氏の資産は約68億元(約1000億円)と、中国の富豪ランキング870位に位置づけられていた。Netflix製作陣は今後「ストーリーを完結させる」ための追加エピソードを予定しているが、三部作全体をシーズン何期で描くかは明言していない。
「作家の劉慈欣が生み出したこの傑作三部作は、私にとって作品ごとに面白さが増していく」と製作総指揮のベニオフは語る。「二作目は一作目よりも素晴らしく、三作目は私の想像を遥かに超えていた。ストーリーは次第に野心的になっていき、二作目で一気に飛躍する。だから二期製作が決まれば上出来に違いない」
出だしで暗い事件が起きてしまった「三体」ではあるが、今後のシリーズに期待したいところだ。
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