夕暮れ時の「目玉の雨」高校教師が語る戦慄の恐怖体験【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、うえまつそうの新連載「島流し奇譚」。この連載では現役教師ならではの他にはない実話怪談を紹介する。第四回目となる今回は、あるサッカー部顧問の高校教師が体験した戦慄の恐怖体験。
第一回:時空を超えた窓…新築校舎に赴任した教師が見たあり得ないもの
第二回:宮古島のカブ畑 ― サウナで出会ったおじいさんは“最後”だったのか
第三回:『7階の多目的トイレ』異世界とこの世を結ぶ何かが渦巻いているのか…
高校の体育教師になって20年目。現場にいて思うことは、生徒も先生も校内での不思議体験というのを多かれ少なかれ体験している人が想像以上にいることだ。
その中の話として、部活が絡んでくる話が意外にも多い。放課後薄暗い学校に残ることがあるからなのか。
以前勤めていた高校の体育科の先輩のM先生が実際に体験したお話。
いまから20年ほど前、M先生が20代の頃に体験した出来事。当時勤めていた高校ではサッカー部の顧問をしていた。
とある暑い暑い夏の水曜日の出来事。その日は真夏には珍しくザー…っと朝から1日中どしゃ降りの大雨が降っており、グラウンドも水たまりだらけ…さすがに野球部や陸上部、テニス部など外での部活は休みにしたが次の日曜日に大事な試合を控えていたサッカー部だけはずぶ濡れになりながらもがんばって練習をしていた。
部員たちもがんばり屋が多く、みんな互いに励まし合いながら夕方までなんとか部活をやり終えた。M先生は部員たちを全員下校させた後、最後にサッカー部の部室の施錠をしようと職員室からマスターキーを持ち、一旦外に出て薄暗くなった中、傘をさしながら部室棟のある建物を目指した。
まだまだ雨はしっかりと降っており、いつもよりも一層暗闇が包むような雰囲気の中、早く帰りたいということもあり少し早足で歩き部室に向かった。
部室についてドアをガチャっと開けると、暗い部室の中、正面奥にある縦長でいくつか連なっている灰色のロッカーの左端のひとつが数センチほど開いていた。
その数センチほど空いている隙間の暗闇の中、目線の高さあたりにギロリと覗く白い目玉がひとつだけあり、こちらを見ていた。
びっくりして思わず叫んだM先生だったがすぐに我に返った。部員の誰かがまだ部室にいていたずらしてるんだろうと思ったのだ。そして電気もつけずツカツカと歩いて「おい早く帰れ」とロッカーを開けると……、中には誰もいなかった。
その瞬間に今度は入り口のドアからドン!と誰かが蹴るような音がしてびっくりして振り返ると、いま閉めたはずの入り口のドアもまたなぜか数センチほどあいていた。
「さっき閉めたはずなのにな…」そう思いドアを見ていると、またその隙間の目線の高さあたりにギロリと覗く白い目玉がひとつこちらを見ている。
しかし今度は顔も髪の毛も、体もドアの隙間から見えていた。
暗くて誰かはわからなかったが、チラリとサッカー部のユニフォームを着ているのが見えた。まだ残っている生徒かと思い近づこうとしたそのとき、そのドアがギィ…とさらに開いてきて、グググググと全身がドアに沿ってさらに見えてきた。その瞬間、首がグゥッと横に90度曲がったかと思ったその拍子に、目玉がズルズルズル…ボトッ…と床に落ちてきた。
もう怖くて動けないM先生…。するとその生徒らしき顔の、目玉があった場所が真っ黒にくぼんで見えた。しかし、またそのくぼみから真っ白い目玉が生えてきて、またズルズル…ボトッ…と落ち、そしてまた目玉が生えてきてズルズル…ボトッ…。それを延々と繰り返していて、床には大量の目玉がベチョベチョと積み重なっていた。
ハッと我に返ったM先生はそのまま後ろにあった窓を開けていちもくさんに逃げて、そのまま家まで帰った。
家族にも話さず自宅のソファに座り、少し時間が経ち落ち着いてきたところで「あ、部室棟のマスターキー持って帰ってきちゃった…あ、部室の窓もドアも閉めてないや…けどもう今日は暗くて怖くてアレがまたいるかもしれないし行けないよ…」そう思い、翌日朝早くに起床して、誰よりも早く学校へ行き、部室棟を目指すことにした。
昨日とはうってかわって朝から暑いくらいの晴天。セミの鳴くなか、昨日のアレは気のせいだ、疲れていて幻を見たんだ…そう自分に言い聞かせながらまだ昨日の大雨で濡れたままの外廊下のコンクリートを歩いていると、奥のサッカー部の部室前だけ床が乾いてるように見える。
近づいてみると、昨日ズルズル…ボト…と大量の目玉が落ちていた場所だけ、その形のまま床が乾いていた。
結局そのユニフォームを着た者の正体はわからないままなのだが、M先生はそれ以来どの学校に赴任してもサッカー部の顧問だけはやらないでいると言っている。
もしかすると夕方・放課後・雨上がり、いろいろな条件が揃うと異世界からこの世のものではない何かが現れるのかもしれない。
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