ゲイの科学者たちが生み出した70年前の生成AI!?『恋文作文AI』とは…
今日の社会の花形技術の1つである生成AIだが、その“オリジン”は70年以上前にさかのぼるという。1952年の時点ですでに気鋭のコンピューター科学者によって“恋文作文AI”が作られていたのだ――。
■70年前に開発された“恋文作文AI”
愛しい恋人へ
あなたは私の熱心な理解者です。私の愛情は不思議なことにあなたの情熱的な願いに抱きつきます。私の好意はあなたの心を切望します。あなたは私の切ない同情心であり、私の優しい好意の気持ちです。
美しいあなた
親愛なる恋人よ
私の同情的な愛情は、あなたの愛情深い熱意を美しく引き付けます。あなたは私の愛情深い崇拝です。私の息もつかせぬ崇拝です。私の同情心はあなたの愛しい熱意を息もつかせぬほどに望みます。私の恋患いの崇拝はあなたの貪欲な熱意を大切にします。
物憂げなあなた
上記の2つの“ラブレター”は 1950年代初頭、英マンチェスター大学のコンピューターラボの壁に貼られていたものだ。
いったいどういうことなのか。
実はこれらは世界初のAI生成文書であり、マンチェスター大学のコンピューター「Manchester Mark I」のAIプログラムが作成したラブレターなのだ。
イギリスの数学者でコンピューター科学者のアラン・チューリング(1912-1954)と、同じくイギリスのコンピューター科学者、クリストファー・ストレイチー(1916-1975)は共にゲイであったのだが、同性愛が犯罪であったこの時代、コンピューターの最前線の界隈には2人をはじめロビン・ガンディ、ノーマン・ラウトレッジ、ピーター・ランディンなど、クィア(非定型的ジェンダー)のコミュニティが形成されていた。彼らは研究の傍ら恋愛関係から仕事関係、プラトニックな関係まで、あらゆる関係について語り合っていたという。
1951年、チューリングとストレイチーは協力して「Mark I」をプログラムし、世界初のコンピューター生成音楽「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」、「バー・バー・ブラック・シープ」、グレン・ミラーのジャズの名曲「イン・ザ・ムード」を演奏した。
チューリングとストレイチーは、親が子供に諭すようにコンピューターを訓練することについて熱く語り合っており、彼らは自分たちを母親として設定し、コンピューターを我が子のように愛し学ばせたのだった。つまりAIと機械学習の端緒となる取り組みに着手したのだ。
“ルーレット”を導入してコンピューターの意思決定に独創性を注入するというチューリングの提案を採用し、ストレイチーはチューリングがプログラムした乱数ジェネレータを使用して1952年に「Mark 1」のラブレター生成プログラムを完成させた。このプログラムは、すでに作成されたテンプレートに適合する単語をランダムに選択して文書を作成する“恋文作文AI”であったのだ。
しかしどうして生成する文書をラブレターにしたのか。そこには彼らがゲイであったことが関係しているのかもしれない。
この時代、同性愛は犯罪であり、彼らは言葉を用いた愛情表現を自由に行うことはできなかったであろうことは想像に難くない。
チューリングとストレイチーが自分の欲望をオープンにできないのであれば、代わりにそれをコンピューターにさせようとしたのは自然に理解できる。
しかしこの愉快な発明のすぐ後、チューリングは年下の男性との「甚だしいわいせつ行為」で起訴されることになった。
有罪判決を受けた後、チューリングは刑務所に収監される代わりに同性愛を“治療”するための化学療法を処分として受け入れたが、その2年後の1954年には青酸カリで自殺したのである。享年41。
悲劇的な最期を遂げたチューリングなのだが、この“恋文作文AI”が今日の生成AIの“オリジン”であるとすれば、彼の見た夢の一部は成就したとも言えなくもない。
参考:「Big Think」ほか
※ 本記事の内容を無断で転載・動画化し、YouTubeやブログなどにアップロードすることを固く禁じます。
関連記事
人気連載
“包帯だらけで笑いながら走り回るピエロ”を目撃した結果…【うえまつそうの連載:島流し奇譚】
現役の体育教師にしてありがながら、ベーシスト、そして怪談師の一面もあわせもつ、う...
2024.10.02 20:00心霊ゲイの科学者たちが生み出した70年前の生成AI!?『恋文作文AI』とは…のページです。人工知能、AI、チャットボットなどの最新ニュースは好奇心を刺激するオカルトニュースメディア、TOCANAで