想像するだけで“息が詰まる”ナッティ・パティ洞窟の悲劇…今も犠牲者の遺体は洞窟の奥に

“狂気の粘土”と名づけられた悪名高い洞窟が米ユタ州にある。探検家たちに人気であったこの「ナッティ・パティ洞窟」は2009年の痛ましい死亡事故で永久に閉鎖され、今も犠牲者の遺体は洞窟の奥に取り残されたままだ――。

■ナッティ・パティ洞窟の悲劇

 1960年に発見された米ユタ州のナッティ・パティ洞窟(Nutty Putty Cave)は、複雑な洞窟システムと怪我のリスクが少ない粘土質の壁面で人気を博し、年間5000人以上が訪れていると推定されていた。

 その後、洞窟の狭い通路に閉じ込められた洞窟探検家やボーイスカウトの救出が4回起き、2006年にいったん閉鎖されることになった。しかしその後に管理体制と安全対策が施されて2009年5月18日、洞窟は再び一般に開放されたのである。

 当時26歳のジョン・エドワード・ジョーンズは、2009年11月24日、3人の仲間とナッティ・パティ洞窟を訪れ、まだ誰も通ったことのない通路を攻略するために洞窟の奥へ奥へと進んでいった。

画像は「YouTube」より

 医学生で一児の父でもあった彼は、運悪く逃げ場のない裂け目に頭から逆さまに突っ込んで身動きできなくなってしまったのだ。彼は知らず知らずのうちに自分の“墓場”となる隙間に滑り込んだ後、二度と日の目を見ることはなかった。

 彼の異変に気付いた仲間によってレスキュー隊が駆けつけ、必死の救助が行われたのだが、逆さまの体勢で身体を圧迫され長時間固定されていたことで、悲惨なことに最終的に心停止に陥ってしまったのである。

 この悲劇について議論するスレッドが最近「Reddit」に投稿され、あるユーザーが「これを見ただけで息が詰まりそうになる」というキャプションを添えた画像を投稿したところ、何百ものコメントが寄せられている。

「まさに悪夢だ」

「こんなところ潜り込むなんて、本当に理解できない」

「彼の立場や精神状態を想像すると、本当に恐ろしい気持ちになる」

「あの洞窟の名前は、傷口に塩を塗るだけだ」

「これを見ると、自分がすごく賢い人間になったような気がする。(自分は)こんな状況に陥ることは絶対にない。洞窟探検は、サバイバルにそれほど不安がない人たちのためのものだ」

画像は「YouTube」より

 熱心な洞窟探検家だったジョンは、2009年に初めて兄や友人たちとここナッティ・パティを訪れた。狭い曲がりくねった通路や、這わないと通れない通路で知られるこの洞窟で、最も狭い場所は「ヘルメット・イーター」、「スカウト・イーター」、「産道」などと呼ばれていた。

 ジョンがゆっくりと洞窟に足を踏み入れると、あるポイントで重大なミスを犯したことに気づき、前にも後ろにも進めず、身をよじることさえできなくなった。

 彼は胸に空気を吸い込んで、幅25センチ、高さ45センチの非常に狭い通路を通り抜けようとしたが、息を吐いたタイミングで上半身が完全に隙間にはまってしまったのだ。彼のスリムな体型が逆に仇となり、狭い穴に身体がぴったりとフィットしてしまったのである。

 大規模な救出作戦にもかかわらず、ジョンを救出することはできず、ジョンの遺体が洞窟内に閉じ込められたまま、洞窟は永久に閉鎖された。まさに息が詰まりそう悲劇であり痛ましい死亡事故だが、やはり自然を侮ってはならないということになるだろうか。

参考:「Daily Star」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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