中国の毛皮農場が“新たなパンデミック発生源”となる可能性…多数のウイルスが動物間で混在、専門家から懸念の声

UnsplashGreg Johnsonによる

 中国の毛皮農場で飼育されている動物において、人間への感染の可能性を秘めた数十種類のウイルスが混在していることが判明し、新たなパンデミック発生への懸念が高まっている。

 2019年末に中国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の最初の症例が確認されて以来、ミンクなど毛皮目的の哺乳類飼育が、新たなウイルスの野生動物から人間への感染を容易にする可能性があると科学者たちは警告してきた。COVID-19の研究を主導してきたウイルス学者エドワード・ホームズ氏は、世界の毛皮産業が「新たなパンデミックの発生源となる可能性が最も高い」とAFP通信に語っている。さらに、「個人的には、世界の毛皮産業は廃止されるべきだと考えている」と付け加えた。

中国の研究チーム、新たなウイルスを含む125種類を検出

 ホームズ氏は、COVID-19が発生した中国における毛皮農場のウイルスがもたらす危険性に関する新たな研究論文の共著者である。中国主導の研究チームは、2021年から2024年にかけて、中国全土の農場や市場で、病気で死亡したミンク、ウサギ、キツネ、タヌキなど461頭の動物の肺と腸のサンプルから遺伝物質を配列決定した。これらの動物のほとんどは毛皮農場のものであったが、食用や漢方薬として飼育されているものや、約50頭は野生動物も含まれていた。

 ネイチャー誌に掲載されたこの研究によると、研究チームは36種類の新種を含む125種類のウイルスを検出した。そのうち39種類は人間を含む種を超えて感染する「リスクが高い」と評価されている。これらのウイルスの一部(E型肝炎や日本脳炎など)はすでに人への感染が確認されているが、13種類は新種であった。モルモット、ミンク、マスクラットからは数種類の鳥インフルエンザも検出された。また、7種類のコロナウイルスも発見されたが、COVID-19の原因となるSARS-CoV-2と密接に関連するものはなかった。

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ウイルス監視の強化が急務

 ホームズ氏が最も懸念しているのは、「アブラコウモリHKU5様ウイルス」である。このウイルスは、これまでコウモリから検出されていたが、飼育下のミンク2頭の肺から発見された。これは、人間にとって致命的な可能性のある中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスと近縁である。シドニー大学教授であるホームズ氏は、「コウモリから飼育下のミンクに飛び移ったことが確認された今、これは警鐘となるべきだ。このウイルスは監視する必要がある」と述べている。

 野生動物の間では、未知のウイルスが何千種類も生息・拡散しているとみられている。科学者たちは、毛皮農場によって飼育動物がそのようなウイルスに感染し、それが人間に感染する可能性を懸念している。COVID-19の起源に関する有力な説は、コウモリで発生し、野生動物との接触により人間に感染したというものである。ホームズ氏は、「野生動物との接触がSARS-CoV-2の出現の原因となったと強く信じている」と述べている。「そして、関連する毛皮取引が、新たなパンデミックを引き起こす可能性は十分にあると考えている」と付け加えた。

Syaibatul HamdiによるPixabayからの画像

 今回の研究で、研究者たちは、毛皮農場で飼育されている動物、特に「リスクの高い」ウイルスが最も多く記録されたミンク、タヌキ、モルモットの監視を強化するよう呼びかけている。デンマークは、2020年にCOVID-19の懸念から、飼育されているミンクをすべて処分したが、その後、一定の条件下でミンク飼育を再開することを許可している。

 今回の研究結果は、人類と野生動物の接点である毛皮産業が、新たな感染症のリスクを高めている可能性を示唆している。パンデミック予防には毛皮産業や野生動物取引の規制や監視が鍵となるかもしれない。

参考:Daily Mail Online、ほか

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