“氷のない南極大陸”を描いた古代の地図『ビュアシュ地図』とは

“ノアの大洪水”が起きる前の氷に覆われていない南極大陸の詳細な地図が密かに伝承されていたのか――。18世紀のフランスで描かれた地図は氷のない南極の海岸線が正確に再現されているのだ。

■氷のない南極大陸を描いた謎の地図

 18世紀のフランスの地理学者、フィリップ・ビュアシュ(1700-1773)が作成した地図の1つは、厚い氷の層に埋もれる前の南極大陸を正確に描いているといわれている。いったいどうやって彼は氷がない南極大陸の海岸線を知り得たのか。

 1739年に発行されたこの“ビュアシュ地図”の作成に使用されたソースデータは謎だが、氷河が溶けて海面が上昇する前の地形調査に基づいていることになり、さらに興味深いのは南極大陸を2つの陸地に分ける内海が描かれている点である。

画像は「Wikimedia Commons」より

 地図を注意深く観察すると、地図に2つの重要な単語が書かれている。conjecturee(推測)と soupconnee(疑わしい)という単語が南の大陸を描いたエリアにあり、一説によれば、この陸地は古い地図には記載されておらず、ビュアシュ自身がこの大陸を仮定していたことを示しているという。つまりソースデータに加えて、ビュアシュの仮説が含まれているというのだ。

 また一部の専門家はビュアシュは南極大陸の存在を知らず、この地図の南極の描写はすべてが彼の創作に過ぎなかったのだと指摘している。

 ビュアシュ地図のほかにも多くの古代地図には、古代の探検家が測量するのが難しかったであろう地球上の地理的特徴が描かれているようだ。これらの地図の一部が、はるかに古い地図を参照して作成されたものであるかどうかは謎だ。

フィリップ・ビュアシュ 画像は「YouTube」より

 ビュアシュ地図をはじめとするこれらの古い地図がどのようにして描かれたのは謎のままだが、一説では現在の人類史以前に地球で栄えていた、ノアの大洪水以前の文明の産物であることが主張されている。

 ビュアシュ地図が南極大陸の氷のない状態を描いているという主張は、チャールズ・ハップグッドの1966年の著書『Maps of the Ancient Sea Kings(古代の海の王たちの地図)』に端を発しているといわれている。それ以来、幾多の人々がほかの古代地図とともに、このビュアシュ地図ははるかに古い地図に基づいて作成されたと主張してきた。ソースとなるその地図は高度に発達した古代文明によって作成されたのだという。

 かつての地球にはきわめて先進的な超古代文明が存在していたという説は一部では根強く信じられているが、その時代の知識が秘密裏に今日の人類社会にも伝えられているのだろうか。ビュアシュ地図の謎に迫る新たな発見が今後もたらされることがあるのか気に留めておきたい。

参考:「Ancient Code」ほか

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文=仲田しんじ

場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。
興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター @nakata66shinji

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