地球には“巨人の種族”が実在したのか?科学が解き明かす真実と伝説

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 近年、SNS上では「地球にはかつて巨人の種族が存在していた」という説が注目を集めている。TikTokなどSNSでは、古代の巨人がピラミッドを建設し、さらには現代に至るまで密かに生き続けているという主張が広まっている。しかし、この説には科学的な根拠があるのだろうか。

巨人は実在するのか?

 結論から言えば、「医学的な意味での巨人」は確かに存在する。しかし、神話や都市伝説に登場するような「巨人の種族」が歴史上存在したという証拠はない。

 医学的に「巨人症」と呼ばれるこの現象は、特定の病気によって異常な成長を引き起こすものである。たとえば、現在世界一背の高い男性とされるスルタン・コーセン氏(トルコ出身)は、236.5cmに達しており、これは成長ホルモンの異常分泌によるものだ。

 ロンドン大学クイーン・メアリーの内分泌学教授であるマルタ・コルボニッツ博士によれば、「医学的な観点から見れば、巨人とは特定の病気を持つ人々である」と説明する。特に脳下垂体に腫瘍ができることで成長ホルモンが過剰に分泌され、通常の成長が止まらないことが主な原因とされている。

 また、成長ホルモンだけでなく、性ホルモンの異常も関係している。通常、人間は思春期に入るとテストステロンなどの性ホルモンが増加し、それが骨の成長を抑制する。しかし、巨人症を持つ人の中には、このプロセスが正常に働かず、成長が止まらないケースがあるという。

「巨人の種族」は存在したのか?

 SNS上では、単なる個別の巨人ではなく、「巨人の種族がいた」という説が語られている。この説には一部の科学的根拠があるものの、完全に証明されたものではない。

 研究によれば、AIP遺伝子という特定の遺伝子が巨人症の原因となる可能性がある。この遺伝子は特にイギリス諸島西部や北アイルランドで多く見られる。この地域では古くから巨人伝説が語り継がれており、18世紀にロンドンで生きていた「アイルランドの巨人」チャールズ・バーン(身長231cm)の骨を調査したところ、彼もAIP遺伝子を持っていたことが判明している。

※関連記事:アイルランドの巨人「チャールズ・バーン」果たされぬ最期の願い

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チャールズ・バーン(中央の人物) 18世紀当時の挿絵 画像は「Wikipedia」より

 興味深いのは、この遺伝子を持つ人々の系譜を追跡したところ、現在の北アイルランドに住むキャリアの全員が、約2500年前の共通の祖先に遡ることができるという点である。つまり、特定の遺伝子によって「巨人」が生まれやすい集団が存在した可能性は否定できない。

 しかし、これはあくまでも「特定の地域で高身長の遺伝子が受け継がれた」というだけであり、聖書の「ネフィリム」や神話上の巨人のような別種の人類が存在したわけではない。実際、AIP遺伝子を持つ人の中でも、巨人症を発症するのは20人に1人程度であり、この遺伝子が100%発症に結びつくわけではない。

古代に「巨人」はいたのか?

 それでは、歴史上の「巨人伝説」はどこから生まれたのだろうか?一部の研究者は、これが考古学的な誤解や神話の影響によるものだと指摘している。

 たとえば、19世紀末に発掘されたグリマルディ洞窟遺跡(フランスとイタリアの国境付近)では、約5万年前の人類の骨が発見された。当時のヨーロッパでは男性の平均身長が170cm未満だったため、180cm以上の個体は「巨人」と見なされた。

 このように、「巨人の遺骨」とされるものの多くは、当時の平均身長と比較して異常に高かったために誤解されたケースが多い。また、現代の陰謀論者たちは、加工された画像や宗教的な文献をもとに「巨人の種族」を主張しているが、実際の科学的証拠とは乖離していると言わざるを得ないだろう。

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科学的な視点から見た「巨人」

 現代の遺伝学では、人間の身長の約90%がDNAによって決定されることが分かっている。つまり、特定の集団で「巨人」が多く見られるのは、遺伝的な要因と環境的な要因が組み合わさった結果に過ぎない。

 たとえば、バルト三国(リトアニア、ラトビア、エストニア)には、旧石器時代の狩猟採集民であった「ヴィラブルナ・クラスタ」の影響が残っており、この地域の人々は世界的に見ても非常に高身長である。また、ノルウェーやアイスランドの人々の高身長は、約5000年前に存在したヤムナヤ文化(紀元前3000年頃)に由来すると考えられている。

 つまり、歴史的に高身長の人々が存在していたことは事実だが、それが「別の種族の巨人」であったという証拠は存在しない。

 SNS上では、「巨人の種族が存在した」「古代の巨大建造物は巨人が作った」などの説が広まっている。とてもロマンのある説ではあるが、科学的な視点から見ると、巨人とは医学的な病気によるものか、単に遺伝的要因による高身長の人々のことを指すに過ぎない。

 確かに、歴史上「巨人」と呼ばれる人々は存在した。それらは神話や伝説が語るような超自然的な存在ではなく、遺伝学や医学によって説明できる現象だったようだ。しかし、神話や伝説の中だけでなく、現代の科学がいつか驚くような発見をする日が来るかもしれない。そう考えると、巨人の伝説が今も語り継がれる理由が分かる気がする。

参考:Daily Mail Online、ほか

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